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榊@スパークG51b
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novelistID. 7889
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【インテックス大阪】【個人誌サンプル】

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ドイツの片隅に小さいようで大きな古い家があった。
それは町のはずれで町からずうっと続く長い一本道を行ったところにあってお屋敷だった。
白い壁、煉瓦色の屋根、広い庭。
お化け屋敷、と近所の子供は呼んだ。
町はずれというか、森の入口だ。その家の後ろには大きな森があってそこもその家のものだったから、それはとても大きな敷地だった。けれどそこの持ち主の家族はもうずっと昔にどこかへ引っ越してしまっていて。誰も住んでいなかった。今まで。
けれど不思議とその家の庭は荒れなかった。雑草はなく折々の花が咲き、庭木はいつでもうつくしく整えられていた。庭師でも入っているのだろう。大人たちはそう思っていた。町はずれの家だから、人が出入りしているところを自分たちが見ないだけで。
けれどそれは間違いだった。どちらかと言えば子供達の方が正しかった。
その家には人でないものが居た。ちいさな生きものだった。それは喋って、初めてその家の扉を開いたルートヴィヒが『こんにちは、おじゃま、します、』と言ったことに酷く怒った。
『違う!』『外から帰ってきたら、ただいま、だろうが!』
彼は正真正銘の先住人(?)だった。聞かないうちからとてとてと荷物をもって立ち尽くすルートヴィヒの前にやってきてスンスン鼻を鳴らし、ふうん?と一度言うとゆらん、しっぽを揺らしてほらそんなとこで突っ立ってないで早く来い、お前の部屋はこっちだと先に歩きながら自己紹介をしてくれたのだ。
彼の名前はギルベルト。この家に、もともと住んでいた主、ルートヴィヒの祖父の友人で種類は強いて言えばシャム?彼が死んでからはここを、ねぐらにして代わりに誰もいなくなったこの家の管理をしているのだと。
猫が喋った。
ルートヴィヒはそう驚くよりも先に小さな子供の姿をした彼の頭と尻についた耳と尻尾の真偽をまず疑った。
彼がまるきりただの子供に見えたからだ。ただ、耳としっぽがあるだけで。
けれどその二つは彼の感情の起伏と共にぴるぴるゆらゆらして偽物のようにも思えなかった(触れて確かめようとする手を何度引っ掻かれたことか)
いや子供に耳と尻尾が生えているのか?
混乱するドイツにひとつひとつ、屋敷の扉を教えながら彼は歩いた。なるほど、彼の手によるかどうかは定かではないが確かにこの屋敷は長い間放っておかれたものではないらしい。ルートヴィヒは感じた。古い家なのにどこもぴかぴかに磨かれて埃っぽい空気などどこにもなかった。
エントランスホール、食堂、居間、図書室三つの客室バスルーム、温室書斎に台所、物置きに、
うつくしい庭。
面したどこの部屋や廊下からも見えるそこに見とれているとすごいだろう、と得意げに言われた。
これも、あなたが?
訊くと当たり前だと言われてこっからは薔薇とひまわりの季節だと教わった。親父は薔薇が好きだったけど俺は夏はひまわりだなあ、と。
彼が呟いたのに俺もひまわりが好きです、と、応えてしまってからハッとして口を押さえたルートヴィヒに彼はヒトの悪そうな顔でにやりと笑った。
そうだなあ?これはなんだろうなあ?
くすくす、くすくすと幼い子供のかたちをしているくせに意地悪く。
『おかえり、ルートヴィヒ』
今日からここがお前の部屋になるんだと彼が辿り着いた扉を開きながら言った。いい家だろ?いい庭だろ?ぜんぶ、親父がお前たちに残したんだ。お前はそうじゃないかもしれないけどこの家はずっと待ってたんだぜ、と。



…というのも書きました。
こちらはパラレルのギルッツです。
にーにゃん×にんげんおとうと、です。

8月22日 SUPER COMIC CITY 関西16 発行
オフセット A5 P38