卑怯
私達は、アンドロイド。感情なんて、無いはずなのに、ね?
デボルは、死の間際壊れてしまった双子の妹を見た。いつも穏やかな彼女の、あの上品な唇から「ぶっ殺してやる」
なんていう言葉が出るとはいささか意外ではあった。でも、双子に作られたのにまったく似ていないポポルがちょっとだけ、自分に似てる近い存在になった気がした。
――あぁ、ポポル。哀しまないで。私はきっと永く生き過ぎたんだ。アンドロイドとして、「人」として。
ニーアと触れ合ってるうちに、レプリカント同様に私達にも「心」が「自我」が生まれてしまったんだ。
それに、気付きたくなかった。だって、気付いたら痛いから。アンドロイドだから、自分は道具だと思えばなんとか、
「心」を捨てられたんだよ。見てみぬふりができたよ。
「ポポルさん!どうしてなんだ?もう・・・やめてくれっ!俺たちはポポルさんたちに育てられたようなものなんだ」
でも、ポポルは攻撃の手を緩めない。唇は歪な形を保ったまま。ニーアの言葉に返事を返そうという意思が感じられなかった。目を見開き杖を振るう。
――やめて、やめて。もういいよ、ポポル。
生きて、欲しかった。所詮、あたしたちはアンドロイド。作られた存在で、操り人形で、幸せとか願っちゃいけない。
でもね?この長い間に、レプリカント達に感情が生まれたように、あたしたちにもあったんだ。
「デボルっ!どうしよう、血が止まらない・・・・」
ごめん。こんなの卑怯だってわかってる。君だけ残すのはおかしいって、可笑しいって・・・わかってる。
置いて行かないで。そう聞こえたきがする。気のせいかな?目の前が暗い。
死ぬ?アンドロイドに死ぬなんて、変だ。活動停止?まぁ、いいか。
あぁ、最後に君の顔、見たかった・・・なぁ。
愛してる。きっと、君のこと。レプリカント達や人間みたいにいうと、この感情はそれなんだ。