二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

向日葵畑

INDEX|1ページ/1ページ|

 
向日葵を見に行こう、と言い出したのは相手の方からだ。男二人で見に行って一体何が楽しいんだ、と反対したのは俺だ。反対したって、行くと言ったからには行くやつだ。それを分かってて反対するのは、最早形だけだ。こいつも、俺が反対すると分かってて言い、まあ良いではないか、と言って無理矢理連れて行くんだ。
 しかし、何だって向日葵なんだ、今は少し早いんじゃないか、と問えば、見に行きたくなったからだ、なんて答えが返ってきた。フンフンと鼻歌を歌いながら準備を進めているのを、何とはなしに眺めていると、次第に、まあ向日葵も悪くないんじゃないかと思えてくるかわ不思議だ。

 見渡す限り、向日葵しか見えない。そもそも向日葵を見に来たんだから、見えないと困るのだが、あまりの広さに度肝を抜かれた。喪失感にもよく似ている感動を、今、我が身を以って感じている。多少のバラつきはあるものの、大概が2m程あり、大振りな花びらを惜し気もなく晒している。
「見に来て良かったでござろう?」
 不意に掛けられた声に驚き、首をそちらに向けると、当然いるのは俺をここに無理矢理連れてきた男だ。質問を飲み込むまでに少し時間が掛かったが、その間こいつはいつものように和やかに笑っていた。
「こんなに綺麗だとは思わなかった。」
 感嘆の溜め息と一緒に零せば、相手は満足そうにくっくっと喉を鳴らして笑った。いつもなら気に入らないその笑いも気にならない程、花は綺麗だった。今なら、英語で「Sunflower」と呼ばれるのも納得できる。確かに、小さな太陽が一面に輝いている。あの中に紛れ込んだら、きっと心地よい温もりに包まれるんじゃないかとさえ思う。

「なあ、知っておられるか。」
「何をだ。」
「向日葵は、実は食用なんでござるよ。」
 見るだけじゃ、足りなかったのでござろうか。
 そんな事を聞かれても、俺には何とも答えられない。切なそうに目を細めて向日葵畑を見渡すその姿は、もう何かを悟り尽くしたような雰囲気を纏っていた。見て、それで足りなくて我が身に閉じ込めた、そんな先人の思いを代弁しようとでもいうのか。

「愛、というものは、いつの時代も重く悲しいものでござるなあ。」


向日葵畑
(愛、なんて、そんな綺麗なもので鍍金しないでくれ)
作品名:向日葵畑 作家名:はづき。