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酒の味を、覚えたのは。

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本当は駄目なんだけれど。

時たま、集まって僕らはお酒を飲む。
僕達はまだ子供でそんなに馬鹿みたいな量を飲めるわけでも無いから
キッチリ茶碗一杯分、酒に酔うというより雰囲気に酔うために、
ほんの少しだけ色々忘れる為に 呑む。

初めて飲んだのは同級生が演習中に大怪我をして学園を去った三日後、
変装した三郎が買ってきたソレを茶碗で一杯ずつ飲んで、次の日皆で頭を抱えた。
次の時は、兵助と勘右衛門の同級生が此の世を去った時。
次も次も其の次も、目指す将来を思えば当たり前の事だけれど、
誰かが去ったり逝ったりする度に、茶碗で皆で一杯づつ飲んできた
色々、呑み込んできた 喉の奥へ流し込んで呑み込んで きた。

何て嫌な飲み会なんだろうな、と、八左衛門が昔 ぽつりと言ったのを覚えている。
俺飲み会ってもっと愉快な物を想像してた
そうだね、とそれしか返す言葉が無かった、
僕も三郎も兵助も勘右衛門も、多分八左衛門自身も。

「あー、俺もう本当酒嫌い…禁酒したいぜ全くよ…」
「無理だろ」
「酒が無いと生きられないとか想像出来ないよな」
「、ほら後一寸底に残ってるよ、きちんと飲んで八左衛門」
「おぅ…」

こくりと飲み干したのを確認して全員で手を合わせる、ご馳走様でした。

後は何時もの様に、何だか重たい空気を掻き混ぜて
今日の授業の話とか委員会の話とか一年は組の子達の事とか、
兎に角好きな話を口々に、滅茶苦茶にぎちゃぐちゃに。
無理矢理、喋って喋って笑って、顔だけでも、笑って、笑っ、て 
何と無く疲れるのを待って、無駄に体力を消費して 五人で就寝。
正直二枚の布団に五人じゃ狭いけど、どうしても 五人で固まって眠りたい。

運良く僕ら五人、一人も欠ける事無く学年を上がってきたけれど
明日の夜、こうやって一緒に 眠る事が出来るかなんて解らないから。

うとうとまどろむ意識の中で、僕の掌を握る三郎の手と
肩に当たる兵助の温度がとても温かい、ぬくい 確かな体温。
今日も、皆 生き延びれた 良かった 温かい。

おやすみなさい、皆、おやすみ。
作品名:酒の味を、覚えたのは。 作家名:たかみ