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長谷川桐子
長谷川桐子
novelistID. 12267
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【8/22発行】サムシン ライク ハレーション【プレビュー】

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(前略)

頭がぐるぐるする…。
荷物よろしく抱えられて走り回られて。漸く地面に下ろされた帝人はふらふらと揺れる身体をなんとか両足で支えながら顔を上げた。
「巻き込んじまった。わりぃ」
サングラスをかけ直しながら、ばつが悪そうに呟くその人を見上げる。かの人の困ったような顔を見るのは初めてで、新鮮だなと思う。
「いえ、それ以前に、そもそも助けていただいた訳ですし…」
ありがとうございました。
ぺこりと頭を下げてから再び顔を上げれば、彼は驚いたような顔で帝人を見下ろしていた。
「お前、俺が怖くねぇのか?」
知らないわけじゃないだろうと続く言葉に、帝人はぱちりとまばたく。首を傾げながら、言われたことを暫し考え、おもむろに口を開いた。
「噂よりも自分で体験したことのほうが信じられます。見ず知らずの僕をわざわざ助けてくれたのだから、あなたは優しいひとなんだと思います」
呆気に取られたような顔をしたあと、彼は笑った。顔を綻ばせる、といった様で、ふわりと優しく。
「へんなやつだな…」
まともに見てしまった帝人はあてられたように顔を赤らめた。普段は恐ろしげな力だとか、サングラスだとか険しい表情に隠されているけれど。目の前の青年はよくみればひどく整った顔立ちをしているのだと気づかされる。
もったいないな、と思った。彼を恐れて近づくことすらしない人々は知るよしもないことだろう。
ちょっとだけ、ラッキーだったかも。
池袋の喧嘩人形の意外な一面を知ることができて、どこか高揚する気持ちを帝人は感じていた。

「あとお前、警戒心薄いって言われねぇ?」
「へ?」
「俺がお前を助けたわけ。下心ありだからとか、考えなかったのか?」
「?」
言われた言葉の意味がわからず顔に疑問符を浮かべて見上げた帝人に、彼は苦笑しながら返した。
「まあつまり、ナンパってことだ」
「え?………えぇぇぇぇぇーーーっ!」
言葉の意味を理解して叫ぶ帝人に、静雄は吹き出した。
「じょ、冗談ですよね?」
「さぁな」
「からかわないでください!」
頬にかっと血が上るのを感じた。その長身を折り曲げて笑い続ける男をむっと見返す。わるいわるい、と宥めるようにひらひらと振られる手をぺちりと叩き落とせば、青いレンズの向こうで色の薄い瞳が少し驚いたように見開かれた。
「…やっぱりお前、変わってるよ」
そう言ってまた微笑を浮かべながら、男はポケットから取り出したレシートの裏にさらさらとなにごとかを書き付けて帝人に手渡した。
「さっきの奴らは……まぁ懲りたと思うんだけどよ。何があったらかけろ」
帝人のこたえを待たずに男はさっさと踵を返す。その大きな背に向かって慌てて「ありがとうございました」と叫べば、相手は振り向かずそのままひらりと右手を振って返した。