俺のケータイが二足歩行なわけがない / サンプル
携帯を機種変更した。
今まで使っていたものに別段不満はなかったが、三日ほど前、空から降ってきた臨也に巻き込まれる形で携帯が吹っ飛ばされてしまったからだ。綺麗に弧を描いて飛んでいった携帯は地面に叩きつけられてカバーが取れ、電池パックは投げ出され、少し遅れて垂直落下してきた臨也によってディスプレイが粉々に砕けたのがとどめだった。
もちろん臨也を降らせたのは静雄だ。頭から血を流しながらもけらけらと笑う臨也と対照的に、静雄は叱られた大型犬のように気まずそうに謝るからもう三年くらい使ったやつだから気にするなと言えば取り立ての途中でもらったらしい携帯ショップのクーポン券をくれた。
騒ぎにはなったが良い機会だった。まだ使えるし面倒だからと今まで機種変更することはなかったものの、確かに周囲の持つ携帯から浮いていたのは事実だ。
今やすっかり携帯といえば人型をしている。SF小説でお馴染みのアンドロイドに限りなく近い。
いわゆるカンタンケータイと呼ばれる単機能のものまで人型、もしくは可愛らしい動物の姿をしている。
作品名:俺のケータイが二足歩行なわけがない / サンプル 作家名:東雲