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さよならは笑顔で

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ラブマシーンを巡るOZでの騒動は一応の終末を迎えた、陣内家では変わらず栄おばあちゃんの誕生日祝いという名前のお葬式が盛大に開催された。遺言通りなら身内のみでという事だったが始まってみれば、政界から各界の有名人が一同に集まり、彼女への祝いの言葉を述べていた。
騒動が終わっても陣内家は賑やかだ、女性陣は料理やもてなしでバタバタしているし男性陣もそれに手伝うように忙しそうに走り回っている。大人達に取り残される形でカズマと健二は縁側で制服姿のまま、眺めていた。健二の鼻には鼻血が出ないようティッシュで塞がれていた。

「お葬式って感じじゃないよね」
「でも、賑やかでいいと思うな。皆笑ってる、楽しそう」
「うん・・そうだね」

ノートパソコンを抱えながらキーボードをタイピングする手を止めてカズマは周囲を眺める。甲子園にいた一人を除いては皆が栄おばあちゃんの最後を知っている。訪れる客達は彼女を悼み、彼女に生前世話になったと話をしては悲しい顔ではなく笑顔で帰って行く。改めておばあちゃんがどれだけすごい人なのか、肌で感じる。

その光景を眺めながら、ぽつりとカズマは口を開くと健二にだけ届く程度の声色で話し出した。

「健二さんは聞いたかもしれないけどさ、僕・・・いじめられてたんだよね」
「あぁ、うん・・・聞いたよ」
「その時もさ、母さんたちに悪いけど死ぬ事も考えてた。僕にはOZがあって、キングがいたからそうでもなかったけどいじめられた時はつらかったし苦しくてそんな事を考えてた」
「そうだよね・・・」

そっとカズマの長い前髪を揺らすように風が薙いだ、健二よりまだ小柄で幼さの残る顔立ちからは何も伺えなかったけれど想像もつかないぐらい悲しかったのだと思う。やり場のない怒りもあったのだろうなと思うと健二は何も言えず、カズマの言葉をただ静かに待っていた。

「僕ね、死にたいぐらいつらかったけど同時に死ぬ勇気なんてなかった。だって死んだらそれまでだし、死んでもこんな風に悲しんでもらえないだろうなって思ってた。なのに頭の中では死ぬ事ばっかり考えて、その癖死んでさ、火葬されて骨壺に入るのが怖くてたまらなかった。こんな事考えてたなんて言ったらおばあちゃん達に叱られちゃうだろうけど・・・本当に怖かったんだ、死ぬ事も生きる事も」
「そうだね・・・」
「だけど、こうしておばあちゃんをみてるとすごいなって思うよ。お葬式って悲しいだけだと思ってた、けどお祭りみたいに賑やかで皆笑ってる。出来れば、こんな風に笑ってもらいたいよね」
「カズマくんなら出来るよ!俺や夏希先輩もいるから、きっと大丈夫!ていうか、キングが死んだらOZ大騒ぎだろうね、追悼スレとかニュースになりそう!縁起でもない話だけどすごいだろうなぁ・・・」

「まだまだくたばる予定はないけどね、彼奴には負けたけど・・・もっと強くならなくっちゃ」
「俺ももっと頑張って夏希先輩にふさわしい男になりたいなぁ」
「お兄さんなら出来るよ」
「カズマ君に言われるとなんか、本当に出来そうだなぁ・・・えへへ」
「・・・お兄さんの笑顔きもっ!」
「え、えぇええええカズマ君ひどっ!」
「鼻にティッシュ詰めてるお兄さんに言われたくはないね」

想像もつかない未来の話、自分の最後がどうなるかなんて誰にも自分にもわからない。けれど願うならば最後はおばあちゃんのように悲しんでもらうんじゃなくて皆に笑って送り出して欲しい。そう思って互いに顔を合わせるとくすくすと笑った。

陣内家の葬式はまだまだ続いている、皆賑やかに盛大に彼女の誕生日を祝い、その生涯を笑顔で讃えた。
作品名:さよならは笑顔で 作家名:b a n