二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

日曜の朝にだらだらしている跡部と忍足

INDEX|1ページ/1ページ|

 

「暇やなあ」
「なら帰ればいいだろ」
日曜の午後。突然家にやってきて勝手に上がりこんだくせにそんなことを言う奴に、俺は即座にそう返した。こうして奴がここに居座るのは、ひさしぶりのことだった。学校のある日はもちろんのこと、休みの日であっても部活はいつでもきっちりと入っていたので。それが厭だと思ったことはなかったが、奴と何をするでもなく部屋にいると、もうすこし部活のない完璧な休み、というのがあってもいいんじゃないかと思う。俺は何もすることのない時間というのがとてつもなく嫌いだったはずなのだが、奴とだとなんとなくそれもいいかもしれないと思わされる。ずっとこうしていてもいいなんて、バカみたいなことも。なのに。

「そういう話やないやろ」
「けど暇なんだろ。あいにくうちにはおまえの暇を潰せるような雑誌もゲームもAVもねえ。ほかあたれ」
「ひどいなあ。べつにそんなんでここ来てるわけやないわ」
なら何だって言うんだ。心の中でひっそりとつぶやく。奴にはインサイトなど使えないから決して俺の心の中などわかりはしない。暇だと言うならもっと奴の欲求を満たせるような場所へ行けばいいのだ。俺はよくはしらないけれど、遊園地だとか映画館だとかゲームセンターだとか、色々あるだろ。奴はショッピングも好きだと聞いた。ような覚えがある。そうだ、服でも靴でも買いに行けばいいのだ。おまえなら付き合ってくれる女のひとりやふたり、確実にいるだろ。なんでわざわざ、来たって暇だとわかっているにも関わらず、ここに。

「なーんかなあ、デートとかおしゃれとかそんな気分やないねんなあ」
なんや、あとべとぼんやりしたいような気分やねん。俺の心を見透かしたように、奴はそう言う。俺は軽い動揺と共に言葉を吐く。
「なら暇だとか言ってんじゃねえよ」
そやな、と言って、奴は軽く笑う。
「あーなんか今度あとべと水族館とか行きたいなあ。ペンギンとか。見たくない?」
「なんでペンギンだよ。そんなもん彼女と行け」
「居いへんもん、彼女」
「つくれ」
「無理や」
「がんばれ。おまえなら出来る」
「適当やな。思ってへんやろ。やなくてやな。あとべと行きたいねんて。水族館。行かへん?」
「行かねえ」
「んな即答せんと」
ええやん、行こ?そう言って奴はこちらを覗き込むように見上げてくる。そうして奴に覗き込まれると、俺は何故か何も言えなくなる。言いたいことはたくさんあるはずなのに、何も言えなくなる。どうしたらいいかわからなくなって、俺はいつも奴から目をそらす。
「・・・気が向いたらな」
「うん」
そうして奴は、今度はやわらかく深い笑みを俺に向ける。俺はまた、居た堪れなくなって目をそむける。

言いたいことはたくさんあるのだ。なんで俺がおまえと一緒に水族館になど行かなければならないのか。そもそもなんでおまえはここにいるんだとか。いてもいいと思ってるのかとか。なんで俺がこんなにも。こんなにもどうしようもない気持ちにならなければいけないのかとか。

「あーでも、」
ふいに奴が発した言葉に、俺は思考から引き戻されるようにはっと顔をあげる。そんな俺に構わず、奴はぼんやりと目線を宙に漂わせながらこう言った。
「でも、またこんなふうにぼんやりするのも、わるないな」
そうして奴はこちらを向いてふわりと笑う。そんな奴を見ていたら何もかもどうでもよくなって、こいつがいいならそれでいいかなどと惚けたことをぼんやりと思う。しかしそれを言うのはどうにもしゃくなので、「はんっ」と鼻でわらったあと、「俺はよくねえよ」と言っておいた。
それでも楽しげに笑っている奴を見て、俺は、どの水族館に行けば一番たくさんペンギンが見れるのかなどと考え始めた。