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毎日こうであればと願う日々

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ガラス同士が激しくぶつかる音がする。

ビンだ、ビンがぶつかる音だ、と静雄は思った。収集車が下で住民のビンを車に積んでいるのだと。
そうだ今日は金曜日だ。資源ごみの日だ。ごみを出さなければ、収集車が帰ってしまう。
頭の回路はぐるぐる静雄と言葉を交わす。

目覚ましがなった。止めた時計を見ると10時30分になるところだった。
動作は一瞬止まって、そのあとはねずみのようにあたりを動き回り始める。
静雄は、びんやら缶やらダンボールを集めてごみ置き場へ向かった。
結局、びんを捨て損ね、ガラスびんがぶつかる喧騒を立てながら静雄は自分の部屋へ戻る。
入口に男がが立っていた。静雄を見るとすっとしゃがみこみ、弱った様子を見せ、あつい、と男は言った。
もう一度男は続けた。あついね、静ちゃん、と。薄くはにかみながら、男は水の催促をした。

質素な背の低いテーブルには麦茶がつがれた簡素なガラスコップが置いてあった。静雄は一気に飲み干す。男は膝をかかえて半分まで飲む。
外ではセミがわが身をひきちぎらんばかりに鳴いていた。静雄は男と言葉を交わすでもなくセミの鳴く声をひたすら聴いていた。まるで耳の中で鳴いているみたいだった。静雄はそれに生命というものを感じていた。今、まさに生きていて命を燃やすように鳴いている。セミは静雄に生きているという実感を沸かせていた。
男が静雄に話しかけた。それは今度、高校のときの仲間達でどこか出かけたいというような話だった。まだ日にちは決まっていなくて、連絡は静雄も含め三人と取ってあるとのことだった。セミと混ざる男の話を静雄はぼんやり聞いていた。まるで夢の中のようだった。

夢。
静雄はふと思った。これは夢だ、とそう思った。

目覚ましがなった。時計を止めた方の手を見ると、もう目覚まし時計は原型を失くしてベッドに散らばっていた。
気だるく起き上がって、寝室から出る。のぼりかけた朝日はサングラスごしの静雄の目を貫くように明るい。
テーブルに目をやるとチェスの盤があり、床にはチェスの駒以外にも将棋の駒やら碁石やらが落ちている。
そのまま視線をずらすと、男が死んでいる。その男は夢の中の男とどことなく似ていた。
床の血がまるで朝日と同じ色をしている。


静雄はぐっと眉間を寄せた。腹立たしそうに、もしくは悲しそうに眉間をさする。
そして、そのまま力なく座り込んだ。外から誰にも見られないように顔を伏せて座り込む姿はすねた子どもみたいだった。


静雄の願う平穏は未だ現れない。