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殺し愛

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ゆっくりと力が入らないように躊躇いがちに、頭を撫でてくれる大きな手が好き。くだらない話に付き合ってくれている時の、短く相槌をうつ低い声が好き。小さな私の身体に合わせて、屈んでから覗き込んでくれる優しい眼差しが好き。歩く時に知らない素振りで歩幅を合わせてくれる気遣いが好き。陽に透けてきらきらと光る、ライオンの鬣みたいな金色の髪が好き。煙草をくわえる口寂しそうな細い唇が好き。軽々と私を持ち上げて抱き締めてくれる腕が好き。手を伸ばしても届かない広い背中が好き。私に触れて壊してしまわないかと自分の力を恐れる、その心が好き。
好き好き好き。幾つもの想いが積み重なって、私の中でどんどん膨張していく。そのせいで、最近の私はひどく胸のあたりが重い。息苦しさすらあった。
「…お兄ちゃんのせいなんだから。」
きっと静雄お兄ちゃんは、そうやって私を殺す気なんだ。だって、殺し屋なんだもの。私はまんまと罠にはまって、静雄お兄ちゃんを想いながら死んでいくんだ。
狡い。酷い。私が静雄お兄ちゃんを殺すはずなのに、逆になるなんて。静雄お兄ちゃんも私と同じように苦しんで、私のせいで死ななくちゃ駄目なんだから。
だからだから。
「静雄お兄ちゃんは私を好きにならなくちゃいけないの。」
そしたら私たちおあいこだものね。



作品名:殺し愛 作家名:六花