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煩わせるな

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「死ねばいいよ、お前なんか。」
手慰みに愛用のナイフをくるりと回し、ワーキングチェアに腰掛けた臨也は事務所の大きな窓から眼下を見下ろす。ネオンに彩られる街は、眠ることを知らずに明るいままだ。そこには、臨也の愛する人間の生がふんだんに凝縮されている。
そんな光景は好ましいものだが、波立った臨也の心を落ち着かせてはくれない。
「人間を気取ったところで、化け物のくせに…。」
人間を愛する臨也が唯一嫌悪する存在、平和島静雄の周りが俄かに賑やいでいることを、臨也は知っていた。それ自体は、一部自分で仕向けた部分もあるので構わないのだ。問題はそこではなく、静雄の体たらくにある。
化け物が愛の力や周囲の優しさで人間になりましためでたしめでたし。よくあるありきたりな御伽噺みたいなことなんて、現実にはありはしない。それを散々言い聞かせて教え込んだのに、静雄の物覚えの悪さにはうんざりだ。
だいたい静雄が人間になってしまえば、臨也は静雄なんかを愛さなければならなくなる。人間を愛すること。それは臨也のアイデンティティだ。臨也自身でさえ否定出来ない、極めて本能的な帰結として、臨也は人間愛を貫いている。それはつまり、静雄だろうがなんだろうが、臨也が人間と認めた相手は愛さずにはいられないということだ。
なんておぞましいことだろう。
けれど、もしかしたらそんな風に化け物ではなくなった静雄を、臨也は嫌悪しなくなるかもしれない。愛する人間の一人としてしか、認識しなくなるかもしれない。
それならばいいのだ。臨也は自身を構成する中核を、失わずにすむのだから。
だが、もし変わらずに静雄を嫌悪し続けたとしたら、それはなんて絶望だろうか。
「やっぱり、お前は死ぬべきだよ。シズちゃん。」
化け物が人間になる前に。等しく愛しているはずの人間に例外が生まれる前に。臨也が臨也でいる為に。



作品名:煩わせるな 作家名:六花