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彼の陽だまり

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「ぽち君、今日は暖かくなりましたね」
冬の寒さも和らいだようで、太陽が雲の隙間から覗いていた。
「春はもうすぐそこまで来ていますよ」
縁側でお茶を飲みながら、本田は愛犬のぽちと会話している。
「洗濯物がよく乾きそうです」
今朝、畳んだ布団を出してこようか少し考えて、
「まぁ、あとでもよさそうです」
またお茶を啜る。ぽちは本田のすぐ隣で伏せの姿勢で静かにしている。
ぽちは普段からあまり鳴かず、静かな犬だったので本田の気性ともよく合っていた。
「今日はいい日ですから、いいことがあるといいですね」
あの人にも…
本田はアーサーのことを考えていた。
「またお酒を飲み過ぎて周りに迷惑をかけていないか心配です」
いつもは英国紳士をきどっているアーサーも騒ぎ出すと手が付けられなくなるのを本田はよく知っていた。
思い出したら、なんだか笑いが込み上げてきた。
にこにこしながら、羽目を外すアーサーを想像していたら周りの人達も、最初は止めていたがだんだん巻き込まれて騒ぎはさらに大きくなる様子が思い浮かんだ。
「まぁいつもの事です」
大丈夫。
アーサーの事を考えると胸が温かくなる。
今日の陽気のせいもあったのだが、それはたとえ寒い日でも変わらなかった。
いつだって、本田はアーサーの事を考えただけで胸の奥のほうからじんわりと火が灯ったように暖かくなるのだった。
それは、とても安心する温もりで、本田はその温もりのことをとても愛しく感じていた。
遠くにいてもその存在を感じている。
アーサーという存在が本田にとっての太陽だった。
「どうしてだろう、会えば大した会話もしないで」
失礼のないように、と気をまわすのは本田の性格からだった。
いつからか、嫌われたくない、と思うようになって碌な言い回しも出来なくなっていく自分がいた。
「私はそんなに不器用な人間でしたっけ…」
さっきまで機嫌の良かった本田が考え事にふけるように少し眉を寄せ始めた。
ぽちはそんな主人の様子を見ながら変わらない表情で静かに寄り添っていた。
本田の日常にアーサーが自然と入り込んできて、考え事が多くなった。
楽しそうだったり、時々苦しそうだったりする。
それなのに、ぽちは気づいていた。
本田の気配はまるで花が咲いたように色づいていることを。
「そういえば、前回お会いしたのはいつでしたか…」
遠くを見ている本田を眺めて、ぽちは身体を横に倒した。
「ああ、ぽち君。眠くなってしまいましたか」
「私も、少し横になろうかな」
伸びをして本田は縁側から部屋に入っていった。
ぽちはそのまま、欠伸を一つした。
作品名:彼の陽だまり 作家名:hare