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しもつきの雨【静帝/新刊サンプル】

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「そりゃ、静雄君も変だけど、帝人君もおかしいに決まってるよ」

「………」

「あ、や、止めてっ、おっ……っく、セ、セルティっ、く、くるしっ……くるしいよっ……」

 セルティの手元から伸ばされた影に首を絞められて、酸欠で顔を真っ赤にする新羅は、ごめんなさいと息も絶え絶えに呻いた。

「……はあっ、死ぬかと思った……いっぺん死んでこいだなんて、そんなぁ?!いや、セルティがそう言うのなら考えないでもないよ。死んだら僕もデュラハンになれたりしないかな?……は?冗談?わかってるよ、セルティ。セルティが悪いなんてことはないよ。大丈夫、僕は簡単に死んだりしないから。何なら今すぐにでも不老不死の薬の開発にとりかか…………話がそれてるって?ああ、それでなんだっけ?あ、わ、わかってるから、そうそう、静雄君の寝言の話だったよね?」

 昨晩、セルティが夜中に目を覚ますと、リビングで寝ている静雄がうなされているのを見つけた。その寝言を聞いたセルティが、静雄の寝言の内容を新羅に相談していたのだ。

「うん、でもさ、今回の件は帝人君の自業自得ってことで良いんじゃない?本人も反省してるみたいだし……静雄はまあ、いろいろ迷惑をこうむったけど、貧乏くじをひいちゃったってことで……」
 そして私たちも貧乏くじ
をひいたよねと茶化すように続けた新羅の口に影を突っ込んで、セルティはPDAにすばやく文字を打ち込んだ。

『けれど帝人は静雄や静雄の上司のことだって助けたんだぞ?』

「ごほっ、ごほっ!あ、あー……ま、まあ助けたって言っても襲う計画があるのを知ってて黙ってたわけで。結局、田中さんは怪我したわけだし、他にも僕たちの知らないところでいろいろあったみたいだよ?僕はともかくセルティにだって影響がなかったわけじゃないし、その点は私もしっかり反省と謝罪を求めるね……今回の帝人君のやらかした一件は、誰だって迷惑な話だって静雄以外の人間でも考えると思うんじゃないかな?」

 セルティがそこまで静雄と帝人のことに思い悩む必要は無いんじゃないだろうかと新羅は諭した。

『だからと言って、あんな大けがさせて、あげくに……』

 書きづらそうにセルティは言葉を濁したが、セルティが怪我をした帝人に追い打ちをかけるように静雄が帝人を強姦した件を言いたいのだと新羅にもわかった。

「静雄が一生面倒見るって言ってるんだから、そうさせてあげれば良いじゃない?」

 セルティも新羅も知らないことだったが、どうやら今回の一件の以前から静雄と帝人には関係があったのだと、最近ようやく二人はわかってきた。相変わらず静雄は何も言わないし、帝人は目を覚ましたとしてもすみませんとただ謝罪を重ねるばかりだったが。

『けど、昨日は何で好きなんだろうって寝言でまで言っていたんだぞ?静雄は自分の気持ちすら迷っているということだろ?』

「静雄のことだからそんな大事な言葉を取り消したりしないと思うんだけどね。セルティだってそう思ってるんだろう?何がそんなに心配なの?」

『……無理して一緒にいたって、幸せじゃない』

 そう言って肩を落とすセルティを抱き寄せて、新羅は彼女を慰めるための言葉をつむいだ。


(後略)