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ながさせつや
ながさせつや
novelistID. 1944
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【8.22インテ新刊】痛い

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「幽くん、帰ってくるのいつだろ」
 このマンションの部屋は幽くんの部屋だ。セキュリティは完璧。防犯・防音に優れ、耐久性ももちろん保障済み。
 脱出、という方法はこの高層マンションの構造からしてほぼ不可能。トイレと風呂までは行けるようになってるけれど、そこから先の間取りなんて全然分からない。こうなればここから出る方法は、外部に助けを求めるか、シズちゃんをどうにかするか、そうでなければ幽くんの帰りを待つ以外にない。
 素っ裸の男が身一つで外へ出たっていいことはないだろうが、しかし、この部屋で手篭めにされたままでいるよりはよっぽど建設的だろう。ここから出られれば、出られさえすれば、事務所へ戻ることも、新羅か誰かを呼ぶことも出来る。そうそう、新羅に関しては一発殴るじゃすまないことは明白だけれども。
 この男が、平和島静雄が、俺なんかの何を好いているのか、それは分からない。
 ただ、新羅の甘言に乗せられただけ、それならいいのに。この男が俺を愛するなど、永劫あってはならないことだった。だって俺とシズちゃんでしょ?
「俺を好きだって言う証明もないわけだし、冗談でした、罰ゲームでしたとかないのかな」
 鈍い金色の髪を手櫛ですいてやりながら呟く。人の心は証明できない。嘘も真実も見分けられない。だから信じることでしか成り立たない。愚かしい人間のメカニズム。でも、俺はその不完全でもろい繋がりが愛しくてたまらない。だから人間を愛している。人間をもっとずっと見ていたい。
「……目に見えれば、満足なのか」
「え?」
 目つきの悪さが倍増しの寝起き。シズちゃんがのっそりと、髪をすいてやっていた俺の手を掴んで起き上がる。目に見えれば、満足なのか。もう一度、同じフレーズが、低いトーンで耳に反射する。
「……少なくとも信じる気にはなるかもね」
「ふうん」
 面倒くさそうに、鬱陶しげに、シズちゃんが呟く。自分で聞いたくせに、と思ったけれどそれは言わない。そっちのほうが後々面倒だと思うから。
「……まあいいか、じゃあお前、ちょっと来いよ」
「はぁ? 何事、いきなり」
「愛の証明、見たいんだろうがよ……どうせもう幽も帰ってくるしな」
 なんだ、そろそろ俺は解放されるのか。帰れる、という期待と希望で胸が一瞬で膨らむのが分かる。シズちゃんだって俺をずっと閉じ込めたいわけじゃなかったのか。なんだ、そりゃそうだろうけど。