固執の指先
例えばこの指を彼の喉元に押し付けるとする。
少しばかり出っ張ったそこに二本の親指を添えて、とくりとくりと繰り返す鼓動を感じながら、ゆっくりと前方へずらすのだ。
彼の表情はどうだろう。そこを押された痛み、あるいは気管を押し潰されていく苦しみに歪むだろうか。あのきりりと吊り上がった二本の眉をきつく寄せて、針のように鋭い双眸を細めるだろうか。
どちらか一つを選んで回答すれば、それにはたちまちペケが付く。
彼は苦痛を知らない。いや、苦痛すらも彼にとっては快楽でしかないのだ。
深く刻まれるはずの眉間の皺など一本もないまま、ただ愉快げに口角を上げ、声まで立てて笑うだろう。息を荒らげることもなく、真っ直ぐに僕を見下すだけなのだろう。
だからこそ、僕は彼に執着するのだ。
歪みに歪んだ真っ直ぐな精神を根本から刈り取るために。そうしていずれ、彼が僕に取り込まれてしまうまで、じっくりと嬲り尽くしてやろう。
fin.