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海に沈む夕陽と朱色に

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たくさんの言いたい気持ち。胸から溢れそうになって。でもおれはさっきまでこの気持ち、ずっと秘めていようって思ったばかりで。ああもう。ぐるぐると、いろんな感情が渦巻いて。どうしようもなくて。きっとおれのどこかがぶちっとキレた。うだうだした言い訳なんかぶっちぎる勢いで、気がついたらおれは大声を出していた。
「なんで、このタイミングでそんなこと言うんですか名取さんはっ!!」
顔が赤い。耳も赤い。多分オレの全身が朱に染まってる。夕陽なんかに負けないくらい、いや、それ以上にきっと赤い。
いきなり叫んだオレに名取さんは吃驚してる。ゴメンなんてそんな言葉、おれにこれ以上言わないでください。
「おれは、あなたに言いたいことがあって、でも言ってあなたと気まずくなったら嫌だって、そんなふうに思ってて」
おれは大股で、ずかずかと名取さんに近寄って、手持っていたおれの靴、その辺に放り投げて。靴、濡れるくらいどうでもよくて、いっそ波に攫われてもどうでもよくて。ただ、おれは手を伸ばして名取さんの胸倉掴みあげた。
「海見て、夕陽が綺麗で。あなたの歌声とか胸に沁みてきて。このままでいられるならそれでいいやって、おれの気持ちなんか言わなくても、胸の中にしまいつづけていればいいやって、そう納得できたのに。なんで納得したその直後にそんなこと言うんですかっ!」
なんか支離滅裂なような気がするけど、でもだけど、おれは何にも考えずに気持ちのままに叫んでた。
顔が赤い。
耳が熱い。
全身が夕陽になったみたいできっと朱に染まってる。
だけど。


「夏目……?」
驚いたような名取さんの顔。おれが何を言っているのかさっぱりわからないってそういう顔、してる。
意外にニブいなこの人も。
おれは掴んでいる名取さんのシャツ、更にぎゅうぎゅうに握って言う。叫ぶ。
「おれはっ!あなたに好きだって言うの諦めようと思ったのにっ!」
「は……?」
「だからっ!」
ぜいぜいと、おれは肩で息をして。それでも視線だけは逸らさないで名取さんをただ見つめて。
「だから……っ!そのっ、おれは……おれ、もっ!」
そこまで叫んでおれはやっぱりその先が言葉にできなくて。
ぎゅううううっと名取さんのシャツ握りしめて下を向く。
海に沈んだ夕陽なんか目じゃないくらいにオレは朱に染まってる。
……ああ、もうホント鈍いな名取さんは。ここまで言ったんだからそろそろ察してくれてもいいじゃないか。
なんて、おれは名取さんに心の中で八つ当たり。というかこれは甘えかもしれない。
上手くタイミングは合わなくて、うまく言葉が伝わらない人にはちゃんと言葉で伝えないと。

すううううっと息を吸いこんで、はああああっと吐き出して。

気合いでおれが告げようとしたその足元掬うみたいに。名取さんはおれをそっと抱きしめてくる。
また、告げられた短い言葉。やっぱりタイミング、あってない。
だけど、おれはもっと赤に染まって。
だからきっと海に夕日が沈んでも、世界が蒼に沈んでも。
きっとこの気持ちはおれと名取さんの間に明かりを灯す。

だから、言う。ちゃんと伝える。おれの気持ちをおれの言葉で。タイミングなんか合わなくても、ちゃんと届けるから受け止めて、ください。

「おれも、あなたが好きなんです」

勇気を出して。



‐ 終 ‐


作品名:海に沈む夕陽と朱色に 作家名:ノリヲ