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ピアノを弾くアルフレッドの話

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音を探り出すような目をしている。 アーサーは不意にそんなことを思った。アルフレッドは楽譜が読めない。だから新しい曲を覚えようとする時、つたない手つきでアーサーがピアノを弾いてやるか、それかメロディラインだけ弦をはじいて教えてやるのだった。青い目が汗を掻いて乱れた前髪の間から鍵盤だけを見ている。ソフトな音を出そうとするとき泣きそうなかおをしたのを見て、アーサーは思わず顔をしかめた──スラックスなのに足下はスニーカーをはいている。
アルフレッドはいつも好きかってに振る舞っているくせに、それでもまだ足りないとばかりに音楽へも感情をぶつける。まるで自分のことを解って欲しいとあがくみたいに。そのくせアーサーが一歩でも近づこうとすると猫のようにさっと身を翻してしまう。たとえばアルフレッドが作り出した何の変哲もない音ひとつで泣いてしまいそうになる、それが事実だったとしてもアルフレッドはそのことにはひどく無頓着だ。自分が作る音こそが彼のすべてで、彼の生き甲斐なのだ。
えろい顔してんな、 そう思いながらアーサーはタイミングを計った。アルフレッドはくちびるをすこし開け、舌先でリズムを刻むようにしていた。すっと通ったあごのラインにライトが当たっている。まだどこか幼い頬のうぶげの上を、アルフレッドの髪を濡らしたばかりの罪深い汗がしたたり落ちる。
きれいな指先は爪がひどく短い。アルフレッドは爪を噛むくせがあった。