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ピアノを弾くアルフレッドのつづき

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乱暴に椅子を弾くのはいつものことだ。おんぼろのアップライトの上蓋を開けてから座る。音がやってくるまで待つ。それが一瞬で来ることもあればそうでないこともある──さっきけんかをしたばかりの相手の顔を思い浮かべたとたん手が先に動いた。
アルフレッドの指先はずいぶん前からまるくなって久しい。爪を噛むくせがあって、爪は必要よりもずいぶんとちびてしまっている。アルフレッドの指先が鍵盤の上を舐めるように這い、責め立てるように叩く。考えたり音を意識するよりも前にそれを捕まえているように指が動く。ほとんどメロディなのかどうかも解らないくらい、ひとつひとつの音を組み立てて何かを速く、速く、はやく。ねえ、もっとゆさぶって、俺をつれていって。
「アル」
後ろから声をかけられたことなんて二回目で気づいていたけれども、アルフレッドは答えなかった。返事をするのもおしい。今はきみよりも、こっちのレディの方が先。俺に触って欲しくて待ってる、身もだえるようにして彼女はアルフレッドの指先を急かす。メロディラインという名前のビッチを求め、アルフレッドは性急に指を動かす。
こめかみに浮かんだ汗がしたたってシャツのえりにじわりと吸い込まれていく。その感覚はするどいのに、音はなぜか遠い。「シャイン」みたい。なんかこんなシーンあったよな──アルフレッドはそんなことを考えた。次のが目に入りそうになったので頭を振った。その拍子に音がとぎれ、あっと思う間に息が上がって、それから時間が追いついてきた。音の波が完全に自分を置き去りに飛び去るのを感じ、アルフレッドは深々と息を吐いた。一心不乱に手を動かしている間に怒っていたのもどこかに忘れてきたみたいだ。ぐいとTシャツで顔をぬぐい、ピアノの上にひっかけていた上着をとってふたをしめる。彼の顔を見、それでもちょっとだけふるえる声で言った。
「なんだい」