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電化と電波

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突然だけど、ipodを買った。
結論から言おう。

たった3日の命だった。


『どうかしたのか帝人?顔が般若みたいになってるぞ』
「あぁセルティさん・・・」

大通りからは外れた裏道でぼうっと立っていた僕に、たまたま配達が終わったのかバイクを押しながら近づいてきてくれた。
ちょうどお昼時のこの時分に、太陽の下でセルティさんを見るとどうも(なごむ)

『なにかあったのか?』
「そうですね・・・僕の足元を見てわかりますか?」
『機械の部品だ』
「その通りです。3日前に買ったばっかりのipodです」
『帝人は音楽を聴くのか?』
「まぁ人並みに」

自分の足元に散らばる最新機器の残骸に涙がこぼれそうになる。
値段が高かったのも当然だけど、この3日かけて何百曲と落とした苦労も思い返すと悲しいなんて言葉では言い表せられない。
ボールペンを握る手にさらに力が加わってしまうものだ。

『そこの物体はどうしたんだ?』
「目が潰れたらいいんじゃないかと思いまして」

思いっきり振りかぶったのが悪かったのか避けられてしまって・・と続けた言葉にセルティさんは目頭を押さえるような仕草をした。

「だから、思い切って股間を蹴り上げました」

足元の僕の可哀そうなipod・・の横でうずくまったままの臨也さんをさらに踏みつける。
でも大したダメージにはなりそうにないし、ここは静雄さんでも呼ぶべきなんだろうか?
それとも

「よかったらセルティさん、臨也さんを押さえてくれませんか?今度こそ眼球潰します」
「・・っ待って待って帝人君!それ視力のほかに命の危険もあると思うから!」
「それはそれで僕の気が晴れます」
「まぁ俺の愛も不滅だけどね、生きてればもっと愛を育めると思うんだ!」
「さらに苛立ちが増しました。反省しないならやっぱり死にますか?」
「ごめんなさいもうしません」

まだ痛みで立ち上がることができないのか、土下座にも似たような格好で臨也さんは体を縮めさせた。
口や態度で反省のポーズだけは取ってるけど、どうせ心の中じゃ何考えてるのかわからないし。
(もうipodは諦めよう・・お金の無駄だ)

『そいつが壊したのか?』
「その通りです」

3日かけて作ったプレイリストを聴きながら外を歩くなんて誰だってすることだろう。
今日は日曜で学校も休みだし、お昼ごはんを買いに行くのに(距離は近いけど)ipodを付けていたら、どうやら後ろから臨也さんが僕に声をかけていたようで。
それほど大きい音で聴いていたわけでもなかったんだけど、声がかぶって臨也さんの呼びかけに気付かなかった。
僕としては天気がいい日曜の昼間、お昼ごはん、散歩、肩を掴まれ、イヤホンをはぎ取られ、ipod本体が地面に落ち、踏みつぶされた。という流れ。

『手伝おうか』
「ちょっと運び屋!俺の帝人君に勝手なこと言わないでくれる!?ま、帝人君に殺されるなら、ある意味本望だけどね!」
「もう復活したんですか。もう一回蹴り倒しましょうか」
「ごめんなさい痛いのもう無理です。っていうか本気で潰れるかと思ったよ」
「無事なことが不愉快です」
「帝人君はほんとツンデレなんだからー。でもそこも好き!」

なんだろう、臨也さんと話していると宇宙人と交信してる気分になるんだ。
とにかく残骸を片付けようと(泣く泣く)腰を屈めたら、立ち上がった臨也さんが上から声をかけてくる。

「でも今回は帝人君も悪いんだよ。俺の声に気付かないんだから」
「それはまぁ・・悪いと思いますけど」

確かに失礼なことに変わりはないけど、だからって人のipodを踏みつけて壊すだろうか?(そういえば人の携帯踏みつぶしてたなこの人)
ちらりと臨也さんを見上げれば、すっごくいい笑顔で(顔だけはカッコいい。顔だけ)


「帝人君は俺の声だけ聞いてればいいと思うんだ!」


(結局電波か)
作品名:電化と電波 作家名:ジグ