覇ジムの日!
「……覇王」
「何か用か」
向けられた顔はとても不機嫌そうで、邪魔するな、と言わんばかり。視線の鋭さにひるんで、思わず声が小さくなる。
「いや、用という訳では……」
「ないのだな」
「……ああ」
返答を聞く前に彼女は顔を伏せていた。しばらくそのままでいたけど、どうしても気になる事があって、もう一度声をかけた。
「……覇王」
「用はないのだろう」
「Well……ちょっと聞きたい事が」
「聞こう」
「どうして、さっきから……胸を、揉んでいるのかな」
視界を遮るように張り出した胸は人よりはあると思う。その上に頭を乗せて、ぽふぽふ手で叩いていた彼女は、そのままの姿勢で言った。
「したいから」
「え……と」
「悪いか」
むっとした口調に慌てて首を振る。
「悪くはない、けど……」
「問題ないな」
「ああ……But、その」
「他に言いたい事があるのか」
「オレのを揉む理由は」
「ああ……」
思い出したかのように呟いて、彼女は少し首を傾げた。だが、それ以降言葉はなく、手を動かし続ける。
「………………」
「どうした」
「……ああ、の後は?」
答えは至極あっさりと返ってきた。
「好みだから」
「ああ、そ――ってえええ」
思わず叫ぶ。好きだとかそういう感情を彼女が持っていると思っていなかったので。
「五月蠅い」
「Sorr……じゃなくて! 好みってその……」
混乱したまま話し続けると、それを遮るように声がした。
「程良く柔らかいな」
「Ah……胸の話」
一気に力が抜ける。彼女の事は好きだけど、まだ心の準備は出来ていなかった。
「他の所も柔らかい」
「……Thanks」
どう返していいか分からずに曖昧に相槌をうつと、淡々とした声で付け加えられる。
「それと」
「What?」
「好みなのは全てだ」
「それは……え……」
「気付け。馬鹿が」
「は――」
問いかける前にキスをされて。目に飛び込んだ金色が綺麗だなあ、とぼんやり思った。