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おにいちゃんといっしょ!

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四月初旬。
幾分か温んできた風を頬に受けながら、新しい制服に身を包んだ帝人は思い切りよく玄関の扉を開けた。

「じゃあ行ってくるね、兄さん、幽くん!」

今日は高校の入学式。
晴れて静雄と同じ学校に合格でき、幼馴染みの少年とも共に入学することができた。
両親は長期の仕事で海外に暮らしているが、こうした行事には兄のうちどちらかが出席してくれることも多く、帝人にとっては特に不満の無い生活だ。
今日も長兄の静雄が入学式へ来てくれることになっている。
次兄の幽も来たがったのだが、仕事の都合がつかないこと、そして入学式に集まる人の数を思えば、現役人気俳優である彼が来ることは混乱を招きかねないためその仕事は静雄に譲られたのである。本人は無表情のうちに納得できないと主張していたが、「幽くんがお祝いしてくれるだけで僕嬉しいな」という末っ子の一言で万事解決したようだ。
こうして二人の兄に送られて、初登校、するはずだったのだが。

「……んん?」

帝人の腕を、何かが強く引いた。
勢いをつけて外に出ようとした帝人は、自然、後方へと強く引き戻される。
ばふっと音を立てて飛び込んだ先には、金髪にバーテン服という少々目立つ格好の青年が立っていた。
その横には帝人と同じく、目を丸くした(とは言っても、気付くのは兄と弟ぐらいだろう)黒髪の青年が。

「し、静に、じゃなかった、兄さん…?」

いてて、と鼻を押さえながら兄を見上げた帝人に、静雄は震える声で尋ねた。

「み、帝人……お前、なんで『兄さん』なんて呼ぶんだ?」

幽のことは今まで通りなのに。
そう続けた静雄の横で、密かに幽は笑いを堪えている。

「えと、あの、正臣がね、」
「正臣?」

聞き覚えのあるような、無いような名前に静雄の片眉がぴくりと上がった。
慌てて帝人は説明を続ける。

「うん。紀田君。ほら、小学校で一緒だった…!」
「そんな奴いたか…」
「兄さんが知らないだけだよ」
「なんで幽の方が知ってんだよ」
「……帝人がよく話してくれたから」

兄さんは仕事に出てたことも多かったし、と幽が続ける。

「で、その紀田って奴が何だって?」
「正臣が、『高校生にもなって兄貴のことを静にぃなんて呼ばないぜー?』って」
「よし、紀田ぶっ殺す」

ばき、と骨の鳴る音が響く。
嫌な予感に帝人が顔を上げれば、サングラスで瞳は見えないものの苛立った空気を纏う兄の姿があった。
友達の危機だと察した帝人は静雄の腰に思い切り抱きついた。

「やややめてよ静にぃ! 正臣は大事な友達なんだからね…っ!」
「っ!!」
「……俺も止めておいた方が良いと思う。帝人、泣くから」

微力ながら、隣から幽も加勢してくれる。
可愛い弟たちからのお願いを静雄が聞けない筈もなく、その拳は奮われることなく下ろされた。

「僕ももう高校生になったんだから、自分でできることはがんばるって決めたんだ。だから兄さんたちにもできるだけ頼らないでがんばってみるね…!」

そう言って笑う帝人に静雄と幽は一瞬顔を見合わせ、同時に笑みを浮かべた。
それは弟の成長を喜ぶものでもあり、純粋に可愛いと思う気持ちでもあり。

「おう、がんばりな。でもな、もし困ったらすぐに言えよ?」
「俺も兄さんも、いつでも帝人の味方だから」

二人の手のひらが帝人の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「うわわ」と声を上げながらも、こうして自分のことを心配してくれる兄がいることに帝人笑みを隠せない。

「それじゃあ、今度こそ行ってきます!」

手を大きく振りながら走り出した弟を、二人の兄は静かに見守っていた。







「ところでよぉ、なんで幽は未だに昔の呼び方なんだ?」
「ああ、それは昔からずっとそう呼んでたから急には変えられないみたいだよ」
「そうか……」
「なに、兄さん寂しいの」
「いや、まあ、なんだ……そう、なのかもしれねぇな」

(本当は俺だけの特別な呼び方が嬉しくて、変えないでってお願いしたなんて)
(とてもじゃないけど言えなさそうだ)
作品名:おにいちゃんといっしょ! 作家名:志保