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朝だ。太陽がまぶしい。どうやら今日も俺たちは路上で夜を明かしてしまったようだった。と思ったところで目の前の奴が「朝だ」なんてつぶやくもんだから、なんだか変な繋がりができてしまったような錯覚に陥って、そういやもう8年の付き合いになるんだし、なんて、眠ってない頭はけして普段なら思いもしないような考えを俺に降らしてみせる。殺し合いで明かした夜に意味などあるはずもないのに、「・・・朝だな」と答えてしまったらもうダメだった。疲れた瞳で奴のところどころ切れたくちびるに狙いを定めて触れ合わせてみる。視界の端で奴の目が大きく見開くのが見えた。



がしゃぁああん。物が飛んでってどっかにぶつかって割れて壊れる音がした。
ひいい、と叫んで尻を向けて逃げ出す男を見送れば、数百メートルは離れた場所にいたトムさんが近寄って来て「今日どうしたよ」と小声でささやく。きっと俺を刺激しないようにと気を使ってくれているのだろう。トムさんは本当にいい人だ。サングラスを掛け直して「別になんでもないっす」と返す。トムさんは首を傾げて「ならいいけどよ」と言った。トムさんが首を傾げるのも当然の話だ。今日の俺はいつにも増して最高に荒れていた。それは当然臨也のせいだ。だが俺のせいでもある。いやでもやっぱり臨也のせいだ。そこんところは譲れねえ。
今朝、一晩中殺し明かした俺たちは路上で朝を向かえ、そして俺は何を思ったか何を間違ったか朝焼けをバックにスズメの声をBGMにノミ蟲にキスをした。目を大きく見開いた臨也は次の瞬間俺の頬に思い切り平手を加えた。パチィインとイイ音がしたが俺はまるで痛くはなかった。代わりにノミ蟲の手が腫れていた。その手を庇うように抑えて臨也は俺の方を睨み付け「な、なにすんの」と言った。いや、叫んだ。俺はすこし考えたあとで「・・・キス?」と言ってみた。
「なな、ななに考えてんの?ばかじゃないの?」
「ばかじゃねえよ」
「じゃあなに?なんなの?なに考えてんの?」
「・・・うっせえなしらねえよ」
してみたかっただけだよ、と言ったら臨也は今まで見たこともないような顔をしてぐーで俺の顔を殴って逃げた。大して痛くもなかった。が、鼻血が出ていた。

疲れていただけだ、といえばそれだけの話だ。それだけの話なんだ。なんだけど。
あんとき臨也は傷ついた顔をした。それはあいつらしくねえ人間の顔だった。それを見て俺も傷ついた。ここが問題だ。ノミ蟲が傷ついたってことはまーどーでもいい。それはあいつの勝手だ。俺のしったことじゃねえ。だけどそれでなんで俺が傷つく必要がある?他の人間なら別だ。でもあいつはノミ蟲だぞ。俺が心を痛める部分なんか微塵もないはずだ。このことを考えるとすごくむしゃくしゃする。朝からずっとだ。ああちくしょう。なんで俺がノミ蟲なんかのために頭使って悩まなきゃなんねんだよ。あーくそ、ちくしょう。つーかそもそもなんで俺はあいつにキスなんかしちまったんだろう。だれにもしたことなんかねえのに。ん?・・・ちょっと待て。これってもしかしてファーストキスなんじゃねえか?俺もしかしてファーストキスをあのノミに・・・?え、まじか。思わずぐああ、と呻いて頭を掻きむしると「ほんとに大丈夫か・・・?」と言ってトムさんが心配そうに覗き込んできた。おまえもう今日上がっていいぞ、とその顔のまま言う。ああ、本当にいい人だ。こういう人にキスするんならわかる。トムさんになら俺、キスとか色々、してもいい。ってアレ?ダメだ、今日の俺は本当におかしい。これもそれもあれもどれも全部ノミ蟲のせいだ。「すんません、失礼します」とトムさんに頭を下げて、俺はその足で新宿へ向かった。



ドアをノックすると何の物音もしなかったのでドアをぶち壊して部屋へ入った。
ドアを片手に持ったまま部屋の奥へ入っていくとうつろな目をした臨也がソファに座っていた。
「・・・シズちゃん、弁償」
「うっせ」
はあ、とためいきを吐かれた。いつも異様なまでにベラベラベラベラしゃべり倒す臨也がまったく口を開こうとしない。
「・・・朝のこと怒ってんのか」
「べつに」
「怒ってんだろ」
「だからべつに怒ってないって言ってんだろ帰れよ」
「あーてめえにちょっと聞きたいことがあんだよ」
「・・・なにかな」
「おまえ今朝の・・・その・・・やだったか?」
「悪いけど思い出させないでくれない俺朝からすごい努力してんだからね死ねよ」
「いいから答えろよ」
「なにその華麗なまでのスルー嫌だよ決まってんだろ俺はシズちゃんと違って変態じゃないんだ」
「俺は変態じゃねえよ。そうじゃなくてその・・・」
「なんなの」
「ファーストキスだったんだ」
「・・・はい?」
「ファーストキスだった。それをおまえに捧げちまったっつーありえねー自体に対して俺はどういう態度を取ればいい」
「いやしるかよ。つかなんだよ。なんのカミングアウト?」
「そういうカミングアウトだ。で、どうすればいい」
「しるかよ。ねえもういいから死ぬか帰るかしてくれない?」
「嫌だ。ところで俺はどうしたらいい」
「だからしるかって。好きにしたらいいじゃん俺関係ないし」
「けど下手したらまたおまえにキスしたくなりそうだ」
「なんなのもうシズちゃん今日ぜったい変だよ!わかったもう歳だから徹夜が効いてるんだわかったいいよ寝ろよベッド貸してやるから!寝ろ、もう!」
「有り難えがおまえのベッドとか入ったらなんか変になりそうな気がする」
「やめろ!!もう十分変だ今日のシズちゃんは!!!」
「じゃあ借りていいか」
「ダメ!!ああもうどうしろっての俺だってどうしたらいいかわかんないんだよシズちゃんが変なことするから!!」
「変なことって言うな」
「変なことだろうが!!あのさ、じゃあ逆に俺も聞いていい?シズちゃんどういうつもりで俺にあんなことしたの」
「おまえそれ今朝も言ってたよな」
「いいから答えろよ」
「・・・してみたかったから・・・いや、ちがうな。なんつーか、そういう感じだったから?」
「そういう感じじゃなかったよ?!すくなくとも俺は!!」
「あーもーうっせえな俺だってわかんねえんだよなんかおまえとそうしなきゃいけないような気がしたんだよしゃあねえだろしちまったんだから」
「つまり理由とかはなくしたんだね?俺のこと好きになったとかそういう阿呆みたいなことはないんだよね?」
「いやでもずっと考えてたんだがこうして見てっとおまえかわいく見えなくもないよな」
「やめて!!!!」
「・・・てめえよお、忘れてえのになんでそこまで理由とかにこだわってんだ?」
「・・・わかんないよだから言ってんだろ俺だってどうしてこんな気になってんのかわかんないんだよ」
そう言って臨也は膝を抱えてソファの上で丸くなった。まじで朝からずっと悩んでいたのか眼が赤い。「なあ臨也」声をかけると、ん、と目だけでこちらを見上げてくる。その顔に向かってかるくかがむようにしてもういちどキスをした。臨也が固まる。
固まったままの臨也に向かって「・・・わかったか?」と聞いた。
「なななにが?」
「わからなかったことが」
「わかんないよシズちゃんがバカだってことしかわかんないよ!」
「俺はわかった」
「はあ?なにが」