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下向きの沈黙

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地面ばかり見てると、その内いかにもな人達にぶつかって医療費請求されちまうぞー?
そんな正臣の助言は常識であって至極正しい。
だがどうしても気になってしまうのも、好奇心が強い自分の習性から考えれば自然なことなのだ。



良心的な友人の残す足跡は、あちらこちらで跳ねてステップを刻んでは表現が真に豊かである。
共にクラス委員をしている女の子は淡々と静かに、また背筋が真っ直ぐ伸びている様子を残す。
街に一歩踏み出せば人間が如何に世に溢れているかがよく分かる。原型から遠く離れ面影もない道端で、根元から引き抜かれた標識の傍に力強く地を踏み締めた足跡がある。相対するのは特徴的な軌跡を描いた跡で、それを辿り始める。


刺さったり転がったりしていた公共物が減り、やがて平常通りの光景が戻る。途切れない足跡を追い続けながら、段々と調子が弱々しくなっていく目印に足を止めずに目を凝らす。
本当に、息を切らせてこんなに急ぎながら何処へ、どうして行くんだか。答えもなくて分からないけれど、早くしないと例外なく目印が薄れてしまうことだけは分かっているのだ。

ようやっと公園の奥で木々に紛れ隠れているベンチに横たわる、真昼のお化けみたいな違和感ある印象を振りまくひとが目に入った。
あれはやっぱり人間だなんて認めてあげない、などと恨めしそうに呟いている。
今回は相当こっ酷くやられたらしく、均整のとれた細身を覆い隠す装い全体に血が散っていて自業自得ではあるが痛々しい。
負傷で火照る顔を腕で隠しているので、只今大変不機嫌なひとは此方には未だ気付いていないようであった。

足元の跡を追い越してしまおうか、迷う。
あのひとの上に影を被せることを、躊躇う。
そうであるから暫く己の足跡も、ベンチ上のひとと同じく更新されないままで。



俯いて薄れていく跡を眺めているだけの時がゆったりと過ぎていく。
作品名:下向きの沈黙 作家名:じゃく