君にはもうついて欲しくないから
エトウは部屋の中で一人、落ち着きがなく煙草を吸っていた。
ライアーゲーム
人を騙し騙せれ、裏切りが交差するあの場所。
あの場所でエトウはフクナガに出会った。
自分でも時々不思議に思う。
エトウはそのライアーゲームでフクナガに騙され、自分を救ってくれた恩人さえも騙した。
騙されただけではなく、暴力も受けた。
(あんときは痛かったな)
その時のことを思い出して、殴られたところが痛くなる。
そんなことをされたのに、その相手と過ごしている。
どうしてこうなった?
時々エトウは考えるが、いつも答えが出ない。
(くされ縁?違うな…なんつぅんだ、こうゆう場合?)
今のエトウの状況を見れば、フクナガが馬鹿だのなんだのと声が聞こえてきそうだが、そのフクナガはいない。
「行ってくる」
「どこに?」
「ライアーゲーム」
それが、フクナガと交わした言葉だった。
それ以来、連絡が取れない。
(あいつのことだし、今頃上手くやってるだろ)
そう思うが、不安は増すばかりだ。
もし、あいつの考えた作戦が上手くいかなかったら
もし、誰かに騙されたりしたら
もし、ゲームに負けたら
ゲームに負ければ、多額の借金を背負わされる。
それは嫌という程分かってる。
だからこそ、怖い
もし、フクナガが借金を背負ったらフクナガはどうする?
多分、借金を返すために今まで以上に人を騙すだろう
騙すために、自分の前から姿を消す―――――
そんな考えばかりが頭を過ぎって、落ち着くことが出来ない。
(あぁっ!もう!)
エトウは吸っていた煙草を灰皿に押し付け勢いよく立ち上がった。
自分がその場に行っても何も出来ないと思う。
でも、こうして悩んでるのは自分に合わない。
あいつにはもう人を騙して欲しくない。
その思いを胸に、どこで行われてるかも分からない場所へとエトウは向かった
騙すなら俺だけにしてくれ、俺ならいくらでも騙されるから
作品名:君にはもうついて欲しくないから 作家名:愛希@1006