ふわふわの
朝と、金色の、幸福の象徴について考える。
いや、わりとからっぽの頭で本能的に。
ふわふわの
卵が切れてた。
冷蔵庫の前でしばらく考える。
朝、少し前に起きたところで、まだ頭が起動中。
「しずおー?」
寝ている恋人に呼びかける。
「…うぁい。なんすか」
「わり。も少し寝てれ。俺ちょっと出てくるから」
「え!」
寝てろと言ったのに、がば、と起き上る。
「…った」
起き上って、またすぐ沈む。
「あー。だから寝てろって」
「どこ行くんすか」
「コンビニ。卵切れてた。買ってくる」
「…俺も行きます。いや、俺が行きます」
「無理だろ」
「うう…」
恨めしそうに上目遣いで睨まれた。
「ぶ。かわいいなそれ」
うつぶせで布団から顔だけ出して、静雄が拗ねている。
「卵、いりますかね」
「いやお前がオムライス食いたいって言ったべ。昨日」
「卵、いりますかね」
「…なかったらオムライスにならんだろ」
どうやら彼も、まだ完全に覚醒していない様子。
「ご飯は炊けてるから、ちゃっと行ってちゃっと買ってすぐ帰るよ」
「トムさん」
「んー?」
「トムさんのオムライスもすげぇ好きなんですけど、トムさんがちょっと出かけて俺がここに一人留守番ってのがすげぇさみし」
俺が思わず口開けて凝視していたら、しゃべってる途中で、静雄がいきなり黙り込んだ。
布団の中に、顔が潜っていく。
あ、目が覚めたな。
「なんでもないですいってらっしゃい」
くぐもった声。
「…お前それわざとだとしたらすげぇな…!」
つかんでた財布を放って、布団の上からぎゅうううと抱きしめる。
「な!んでもないですってだから!さっさと買ってきたらいいでしょう!」
「いるかなぁ、卵」
「いりますよ、オムライスなんですから!」
静雄は、俺を跳ね飛ばすこともできずに、布団の中で縮こまっている。
顔がみたくてしょうがないけれど、布団の端っこをぎゅうとつかんで、そこだけは阻止して、しょうがないので上からぎゅうぎゅうと抱きしめる。
「お前なんでそんなかわいいの。俺をこれ以上どうしたいの。っとにもう」
「…オムライスできるまで知りません」
「あー。午後からの仕事たりぃな。さぼろうか」
「駄目ですっ」
これ以上いじめると泣きそうだ。
てか、すでに涙声だ。
小山みたいになった布団から離れて、上からぽんぽんとたたく。
「んじゃ、行ってくる。ついでにプリンも買ってきてやろう」
「卵…あまり食べすぎるのよくないんすよ」
「お前が言うな」
「ふ、」
あ、笑った。
もう一回ぎゅうぎゅうしたいなと思ったけど、キリがないので我慢する。
投げた財布を拾って、もうわりと日の高くなっている外へ。
まだかろうじて午前中。
金色の髪した恋人はプチ籠城中で、金色の光が街に注いで、天気は上々。
帰ったら金色のふわふわのオムライスを作って、二人で遅めの朝食。
なんて幸福。