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ぬるい水

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     ぬるい水





静雄は、のどの渇きに目を覚ました。
他人の体温が、体の半分を覆っている。
肩ごしに、そうっと首を傾けると、肩甲骨のくぼみに、トムが顔を埋めるようにして眠っている。
ゆるく回された腕が、静雄の肘から腹へと触れている。
トムの寝息は、肩甲骨の内側をくすぐって、静雄を緊張させる。

「トムさん、」

起こすつもりはなかった。
それほどに、小さな声で。
トムも、聞こえたのか聞こえなかったのかわからない。

「ん」

反射のように、呼ばれたから返事。
のようなタイミングで。
回されていた腕に、きゅ、と力がこもった。
ゆるやかなままだが、静雄には甘い拘束になる。

「お、起きたんですか」

返事はない。
規則正しい寝息が、静雄をくすぐる。
ふう、とため息。
しかし、これを振りほどかないと、水を飲みにいけない。
簡単にほどけるだろう。
しっかりと抱きこまれているわけではない。
加減もさほど、難しくはない。
けれど、静雄はしばらく迷った。
起こしたくない。
そもそも、離れたくない。
でものどは乾いている。
水分を必要としている。
我慢、できないほどではない。
もう少し、このままでいようか。
ベッドサイドにあるはずの時計は、暗くてよく見えない。
夜明けまでどれくらいだろう。
のど、乾いたなぁ。
でも今こんなにかわいくひっついてる人がいるのに。
これ振りほどいてまで、必要かな、水。
このまま干上がっちゃっても本望じゃねぇかな。
れろん。

「!!??」

肩甲骨のくぼみに、湿った何かが押し付けられて、静雄はびくっと肩を揺らした。
何かなんて、言うまでもなくわかりきっていることだけど。

「トムさん!」
「はいよ」
「な、舐めないでください」
「汗かいてる。しょっぱいなぁ」
「お、起きてましたね」
「起きました」
れろ。

「っ!だから!」
「のど乾いたな。汗いっぱいかいたし」

舌をすぼめて、押し付けて、舐めあげる。
トムの舌は、いやらしい動きをする。
ちょん、と先でつついて、それから唇全体をつかって、甘噛みする。

「ん、ちょ、トムさ」
「声枯れてる、静雄」
「誰の、せいだと!」
「俺以外に原因が?」
「ねぇっすよ!」
「だよな」

かり、と歯を立てる。
跡がつかない程度の。
ささやかな悪戯を最後に、トムは名残惜しげに体を離す。

「あ・・・」
「水持ってくら」
「あ、自分で」
「ベッドに一人で残されるのって、寂しいよな」
「・・・そうっすか」
「うん。今度からペットボトルこっちに持ってきとこう」
「温くなっちゃいますよ」
「だなぁ。じゃあ今度はキッチンでやるか」
「・・・それは何か違う気がします」
「・・・ちっ」
「今ちって言いました?」
「言ってません。水持ってくるからいい子で寝てな?」

静雄は頭をゆるく押されて、枕にぼすんと落ちる。
背中が熱を持って、じんじんとする。
のどの渇きは、忘れていた。




_ _ _ _ _ _ _ _


「いい子で寝てろっつったのに」
「だって、トムさんが」
「俺が何」
「や、らしい舐め方するから」
「俺のせい?」
「トムさん、寝てる時かわいいのに、目覚めたらなんでそんな意地悪なんすか」
「お前は寝てても起きててもかわいいねぇ」
「かっ・・・・・・トムさんは起きてる時格好いいです」
「ぷ。そりゃどうも。・・・で、それどうすんの。続き、しないの?」
「トムさんのせいだって、言ったじゃないっすか」
「責任とれってか」


_ _ _ _ _ _ _ _


トムが持ってきたミネラルウォーターのペットボトルは、その後しばらく放置された。
それが一気に空になったのは、朝方、ずいぶんと汗をかいて温くなってからだった。

「ぬるい・・・」
「だからキッチンで」
「・・・変態」
「それくらいでヘンタイ呼ばわりされてもなぁ」

お前はかわいいねホントに、と頭を撫でられる。
静雄は、実のところトムの提案に対して、積極的に否を唱えてはいないのだが。

「変態なトムさんも格好いいです」
「・・・いや、それはどうだろう」

頑張って誘ってみたけれど、通じなかった(むしろ引かれた)。
まぁ、今からまたその気になられても、困る。
ぬるい水を飲みほして、静雄は「も少し、寝られますね」と横臥しているトムに寄り添う。
頭をポンポンと撫でられる感触に、目を閉じた。




作品名:ぬるい水 作家名:かなや