二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ずるい英←米のはなし

INDEX|1ページ/1ページ|

 
俺の目に触れないよう細心の注意を払って、それでいて無造作な手つきでイギリスは俺の顔からテキサスを奪い取っていった。妙に不器用だったり目をつぶっていたって上手に出来そうな料理ですらまずくしてしまえる魔法の手を持っているくせに、そんなところだけどうしてだかイギリスはひどく器用だった。俺が止める隙なんてかけらも差し挟まず、手早く、それでいて丁寧なやり方でイギリスはそれを引き抜いてしまった。はだかの指先が器用にめがねのブリッジを支えている。整えられたピンク色の爪にやけに目がいってしまう。
「…イギ、」
声を投げ終わるより先に手袋をはめた無感動な指先が俺のあごに触れ、少しだけ持ち上げた。キスしやすいように。自分の方が背が低いくせに、俺はそう思って歯を堅くかみしめ、抵抗するようにあごを引いたけど、イギリスはもう俺のことなんて見てなかった。イギリスは目を閉じて、俺が避けないってことを知っているのだとも言いたげなやり方で顔を近づけて来た。でもキスの合間に彼が細く目を開けて俺を観察していることを知っている。──イギリスがそうする余裕があることも。
イギリスはまるで恋を味わうような少女の顔をして目を閉じていた。きれいな半円を描いたまつげが作る影を俺はぼんやりと見る。
俺は目を開けたまま、イギリスの顔をじっと見ていた。いつもそうしてくれていたらいいのに。俺が逃げないことだってちゃんと知っているくせに、イギリスはずるい。
俺をもしも好きだと言うのなら、どうしてその生身の手でこそ俺に触れてくれないのか。
作品名:ずるい英←米のはなし 作家名:tksgi