「あいつマジ誰にでも優しいし、外面だけはほんといいっつーか」さらと彼の青い髪が揺れる、(あいつの髪の色ってさ、空みたいで、すげえきれいだろ。)「…いや、違う、けど、そういうんじゃねえけど、むしろ誰にでも優しくしすぎってーか、」くしゃあ、と橙の、そう例えるのなら夕日のようなそれを持つ彼の人が愛した空が掻きまわされる、自分の口から彼の人を貶める言葉が零れたことに驚いたのだろうか、一度大きく目を見開いた後微かに痛みに歪んだひとみの深さに、ああ、と、(でも目の色はさ、夜みたいだなって思う。暗くて透き通ってて、優しい感じがさ、すげえする。空みてえなあの髪の下にさ、夜があるんだ。)「でも、わかってるんだ。あいつのあれは意識してやってるんじゃないんだよ、困ってる奴いたらほっとけないんだ、それは立華も知ってると、思うけど」ちらり、夜が揺れた、私の中に彼の人を探している、ああもう、「でも、あいつさ、結構自分勝手なとこあるんだぜ、自分が正しいって思ったことは絶対曲げないし。ガキっぽいとこあるっつーか、結構わがまま、だったり、」ちら、ちらり、と。随分と騒がしい夜、そんな結弦は知らないわ、あなたのそれを乱すその人はそこにしかいないのでしょう、と。後者はすいと喉の奥に隠した、ほうと安堵と歓喜が彼から溶けだした、あなたのそういうところがたまらなくかわいらしいと思う、(あいつさぁ、あんなへらへらしてっけど実際すっげえうじうじしてんの、ネガの塊みたいなもんだぜ、しかも自覚ねえの、悪質。)悪質。復唱。悪質。(あいつに根付いてるごちゃごちゃしたもん全部引っ張りだしてやりてえの、あいつのへらへらしてるあれをさ、ぶち壊して、やりてえの、)ぎらり、と燃えた彼の人のひとみに、思ったのだ、きっと青い彼はこの熱に燃やされてしまう、彼の青を、彼の寂しさを、彼の夜を愛していた私が唇を噛んだ。その彼の人の朱を、彼の人の熱さを、彼の人の傲慢さを全身に受ける彼に拳を握った、白い手が赤く染まった、朱く染まっていく彼のようだなんて、なんて。「ほんっと、俺の前ではみんなの音無くんじゃなくなんだよな、すげえガキっぽいし、なんつーか、」(でも最近あいつも俺の前ではちょっと根っこ出すようになってきたんだ、みんなの日向くんじゃねー顔がさ、ほんと、あれだけは俺、独り占めしてえの、)私の目の前、手のひらの上で朱と青が混じる、この色を舐めることができるのは私だけなんだから、ほら、彼の人の色をひとみに点す彼の後ろから、足音、消せてないのに、ほらほら、私の愛した青に朱が、混じる。