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つま先に花、彼(か)の名は泡(あぶく)

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脚部パーツを外すと、細い、だけども柔らかい足がボディスーツに包まれたまま現れた。伝わる熱が少し高めなのは、先程までスリープモードに入っていたからだろう。するりと脹脛を撫でると、形の良いつま先が背中を滑っていく。
「ふうん……君の方がタイプとしては新しいのに、足だけはどこか機械的だね。軋む振動が伝わってくるよ。」
「それはキミの足が精巧に作られているだけじゃないの?」
 寝起き特有の、掠れた色っぽい声で舌っ足らずに喋る彼が可愛くて、僕は足を撫でるのを止めずに言葉を零す。
「そうかもしれない。まあ、僕は自分の足よりも君の足の方が好きだけど。」
 するり。頬を寄せて心底愛おしいその足にキスを落とす。人間みたいに痕が残る事はないけれど、それでもその行為に含まれている意味自体は何も変わりはしないはずだ。
「止めてよ、くすぐったい。」
「やだね。何、僕にこんな事されるの、君は嫌なの?」
「そういう事じゃないの。キミはボクの足だけが好きな訳じゃないでしょ?」
 するすると足が背中を上っていく。柔らかいつま先が頬を撫で、桜の花びらの様な爪が描いた軌跡を、僕は無意識のうちに追っていた。

「キミは、ボクが好きなんでしょ? キスする場所、間違ってない?」

 悪戯っぽい笑みを浮べる彼はやっぱり可愛くて、僕は当然ながら逆らえる訳もなく。胸の内で白旗を振りながら、キスする為に彼の名前を呼んだ。


つま先に花、彼の名は泡
(唇は甘かった)