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14才の母シリーズ(カズケンカズ/サマウォ)

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「健二も、強情を張るな。うまくやれるなんて思ってないんだろ」
佳主馬をどこぞの部屋に放り込んで戻ってきた侘助が言うのに、健二は泣きそうな表情でぽつりと漏らす。
「佳主馬くんが好きなんです、」
「好きだからで許されるようなことじゃあないだろう。あの子はまだ14だ」
「それでも、ボクは佳主馬くんが好きなんです。愛してる。お腹の子どもだって陣内には渡さない」
「いい加減にしろ、健二」
淡々と健二が吐き出すのを遮って、侘助がきつく健二を睨みつけた。
佳主馬が家出して数日間、佳主馬と健二の面倒をみていたのは侘助だが、決して二人の行為を認めていたわけではなく、この異常事態にテンパった二人が落ち着くのを待っていたというところか。そして、たぶん理一の思い上がりでなければ、黙っていても早かれ遅かれ気付いた甥が、こうやって乗り込んでくることを見越していたのか。
俯いた健二の顔がくしゃりと歪む。
「いやです、絶対に佳主馬くんは返さない」
だって、あいしてるのに。かぞくになるのに。
「君は、好きだの愛だの言葉を並べて自分を正当化して、君がしでかした行為から目を背けているだけだ」
強い語調で理一に言い切られ、健二は言葉を詰まらせ理一から目を逸らした。
健二だって、どれだけ意地を張ったてみたところで18歳と14歳の子どもがたった二人で生きていけるわけがないとわかっているはずなのだ。仕出かしてしまったことはともかく、この決して愚かではない子どもが、そんな簡単な社会の道理もわからないはずがないのに、何故ここまで頑なになるのか、理一にはそれがわからなかった。
確かに、陣内の家の人間は一時は怒り狂うだろうけど、ずっと健二を恨むような人間ではないし、年月がたてば許されることもあるかもしれない。なのに、どうして。
「佳主馬はまだ14だ、中学生だ」
「……」
「これからがあるのに、君は君の我が侭で佳主馬の未来を奪うのか?」
「……っ!」
「健二」
「健二くん」
理一と侘助の声が重なる。二人から目を背けて健二は己の耳を塞いだ。
「……それでも、嫌なんです。もう一人になんて、なりたくない……」
「健二?」
理一と侘助が健二の吐き出した言葉の意味を解し切れずに首をかしげた瞬間、小さな影が飛び込んできて項垂れていた健二を抱きしめ、吠えた。
「戻らないから!僕は絶対に戻らない!健二さんと一緒にいるんだっ!」
「佳主馬!お前は向こうに居ろって言ったろ?! つか、鍵、どうやって」
「壊した!」
「壊したってお前!」
よく見れば、佳主馬の腕が不自然に赤く腫れあがっていた。
侘助の家には一部屋だけ外からでも中からでも鍵の掛けれる部屋があって、おそらく侘助は佳主馬をその部屋に放り込んで鍵をかけて戻ってきたのだろう。そして、佳主馬がそれ壊したというからには、その鍵をどうやってか(理一には、暴力的な方法しか思いつかなかったが)無理矢理こじ開けたわけだ。
こちらも相当にヒートアップしていたから、多少部屋の外でがんがんやられても気付けなかったのだろう。従姪の予想外の行動力と乱暴さ、そしてそんな従姪の性格を見落としていた己の迂闊さに理一は頭を抱えたくなった。
「これは僕と健二さんの問題でしょ?!なのになんで僕がっ!っ!」
「佳主馬?」
「佳主馬くん?!」
理一と侘助に噛み付こうとして立ち上がろうとした佳主馬の身体がぐらりと揺れて、倒れる。
崩れ落ちた身体を抱き止めた理一は、真っ青な佳主馬の顔色と佳主馬の足を伝って床に流れた生温い液体にざっと顔色を変えた。すぐに侘助も佳主馬の足元の異変に気付いて部屋から飛び出していく。
「侘、車!一番近い救急病院!」
「わかってるよ」
「佳主馬くん!」
「健二くん、バスタオルか毛布持って来て」
「は、はいっ!」
侘助が車のキーを持って玄関の外に飛び出すのを見届けないうちに、理一は健二にも指示を与えた。指示された健二は、恐らく状況を把握していないままに足を縺れさせながら慌ただしく部屋の奥に消えていく。
「佳主馬」
「……っ、なに…」
「病院行くから」
自分の腕の中で痛みに耐えるように身を縮める姪を見やって、理一はなぜこんなことになったのだろうと思った。腕の中にすっぽりと収まる姪の身体は細くて小さくて、こんな小さな身体にもうひとつの命が宿っているなんて、理一は信じたくなかった。信じたくないのに、信じたくない命が消えてしまうかもしれないことがとても怖くてたまらなかった。
「今は、お前から無理に引き剥がさないから」
だから、その子を失うな、と告げた理一に、佳主馬は佳主馬らしい不敵な笑みで笑って頷いた。

2010.09.05