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14才の母シリーズ(カズケンカズ/サマウォ)

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ソファに深く座り込んで、侘助はとっくに冷めて冷たくなってしまったコーヒーを啜る。いつも飲むインスタントコーヒーなのに、それは、今まで飲んだことのないほどに苦くて、不味いコーヒーに思えた。
「それは、」
お世辞にも自分だって人に誇れるような生き方はしてこなかったし、いつだって大事なところで選択を誤ってきた。だから強く反対しきれないというわけではないけれど、陣内の身内の中で唯一、侘助にだけ秘密を打ち明けてくれた二人に、これ以上侘助が常識を説いて反対して、無理矢理にでも佳主馬を名古屋に返したならば、二人はきっと侘助の前からも行方を眩ませてしまうような気がした。
「どっか逃げるつもりだったのか」
「……」
「否定はしないんだな」
「侘助さんなら、わかってくれるような気がして」
「納得したわけでも賛成してるわけでもねーよ。でも、行方を眩まされるくらいなら、目の届く範囲にお前らを抱え込んだ方がいいって思っただけだ」
コーヒーカップをローテーブルに置いて、がりがりと乱暴に頭を掻く。
陣内の家の人間でありながら、陣内から少し外れた侘助を頼ったのは、陣内を捨てる覚悟を決めたこの子どもたちが何時切れるかわからない細い糸でもいいから陣内に繋がっていと思ったからだろうと侘助は思う。それとも、妾の子と蔑まれた幼少期を過ごした侘助ならば、世間から外れた自分たちを受け入れてくれるのではないかと思ったのか。
世間はこの子どもたちが思っているほどにやさしくはないというのに、その細い身体でどうやって生きていくのだろう。
「ひとつだけ約束してくれ、このことは誰にも言わずに黙っててやる」
だから、何も言わずに行方を眩ますようなことだけはしてくれるなよと告げた侘助に、ありがとうございますと頭を下げた健二と、ほっと肩の力を抜いて健二に縋りつく幼い又姪を見ながら、いったいこれからこの二人の子どもはどうなるのだろうと侘助は思った。

2010/08/31