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【ノマカプAPH】片側通行の小さな恋【日←湾←香…?】

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彼女の魅力といえば、やはり笑顔だ。

ヨーロッパ系の女に比べたら鼻も低いし、体型だってナイスバディとかそういうのでもない。
でも、ふわっと笑う、その表情は世界一だと思うわけで。

「えへへー、これ見てください!」

…ただし、

「日本さん!」

俺に向けたものオンリーで。

───────────

久しぶりに老師の家に遊びに来たら、聞き覚えのある高い声が聞こえてきたのでその方向へと向かうと、そこには俺の想い人と近所にいる方の島国がいて、なにやら楽しそうに談笑をしていた。

俺の想い人・台湾は、もうずっとその島国に片想いをしている…らしい。
彼女が玉砕した時にもしかしたら自分を見てくれるようになるかもしれないという淡い思いを抱いて、「早く告白すればいい」と言ったことがあるが、彼女曰く「片想いの時期が一番楽しい」らしい。
苦し紛れに「いつまでも心に秘めたままじゃ、伝わらないから進まない」と彼女に宛てた言葉は、跳ね返ってそのまま自分の胸に刺さった。

「あら、香港くんも来ていたんですね。」

入り口付近で立ち止まってぼんやりと考え事をしていたら、向こうから話しかけてきた。

「ちょうど良かった。美味しいお茶菓子をいただいたので、お裾分けに来たんです。香港くんもいかがですか?」

そう言って、彼女との間にあった座布団をすすめる。
一瞬、台湾が残念そうな表情を浮かべ、しかしいつも通りの明るい声を装い、

「香港、おいでよ。おいしいよ!」

と言った。

「いや、今俺腹壊してるから遠慮する的な。」

そう言うと二人は心配そうな、正確に言えば台湾は少し安心した顔をした後にいかにも心配そうな表情を浮かべた。

部屋から立ち去ろうとした俺に向かって日本は小さな包みを渡して、
「明日でもまだ大丈夫だと思うので、よかったら食べてください」
と言った。



「老師、俺もう帰ります。」
「いきなりどうしたあるか。腹でも壊したあるか?」
「…まあ、そんな感じでいいです。」
「そうあるか。気をつけて帰るよろし。」


古い屋敷を出て、のどかな畦道を歩く。
もらった茶菓子の包みを開けて、一口ほおばる。
一瞬で口の中に甘味が広がる。
最後の一口を口に放り込んだ瞬間にふと彼女が自分以外の男に向けた心からの笑みを思い出す。
今まで食べた分がグッと喉までせり上がってきた感覚がして、急いですべて飲み込んだ。

「なかなか、うまくいかないモンだな…」



───────────

「はぁ…」
「どうしたんです?台湾さん。」

香港が去ってから数分後。
台湾は盛大にため息をついていた。

「どうして…こう…うまくいかないんでしょう。」
「うまく…?」
「もっと話とかしたいのに…うまくいかないんです…。」

その後もぶつぶつと何か呟いている台湾を見た日本は、クスリと小さく笑ったあと、少し冷めてしまったお茶をすすった。


【終】