猫のまどろみ
「いい。面倒」
腕を伸ばして、ベルトを解いて。きっちり着込むくせに、時折こいつはこうして面倒がってそのまま寝ようとする。
ボタンを外してコートの前を開かせて、ネクタイに手を掛けてももう動く気もないのだろう。人の膝に頭を乗せて、すっかり寝る体勢だ。
「アラウディ」
柔らかい髪を撫でてやる。気まぐれなくせに変なところで真面目に仕事に努めて、こうして寝床にもぐりこんできては疲れを癒していく。
まるで野生の動物に心を許されているような、そんな気分になるのも仕方ないだろうか。
「おやすみ」
色素の薄い髪に指を絡めて、額に口付けを落とした。
「…って」
「そうじゃない」
まだ寝ていなかったようだ。仕方なく、機嫌を損ねる前に言外の命令に従ってやる。俺がジョット以外の言うことを聞くなんて、そうないことなんだから少しは有難がれっていうのに。
惚れた弱みか。