紅い炎
ただ穏やかな様子と似合わず、不自然にぎらついた目を持つやつだと思っていた。それがどうだ、こうして本性を表せばまるで噂の通り、嵐ではないか。
「何て顔してんだよ」
その手はただ優しく触れてくるというのに、彼の信ずるものに逆らう輩には容赦なく引き金を引くのだと、僕は知っている。だから、捕らえにきたのだ。
「この辺りを荒らしているのは君達だろ」
「だったらどうだってんだ」
否定くらいすればいいのに、つくづく卑怯な男だと、罵る言葉をすんでで飲み込む。
「君を、逮捕する」
罪状は数えきれない。それに、彼が殺人者だという証言をできるものは僕だけじゃない。
「…へぇ、警察の犬らしい仕事もすんのか」
ベッドで情報を聞き出すだけじゃねぇんだな、そう言っている彼の緋色の目には情の欠片もありはしない。
わかっている。体の繋がり以上の何も、彼とはそれこそ何も、ないのだと。
「おとなしく従えば悪くはしない」
「首に縄を掛けられるとわかってておとなしくしてるほど馬鹿じゃねぇよ。なぁ、アラウディ」
銃を構える彼の仕種は、情交の時のそれと似ていると思ってしまう。その、瞳さえも。
「殺し合いでも始めるか」
冗談のように、唇を歪める彼の頬で、消せない炎がゆらりと燃えた。