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瞬きを重ねては

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恒常的に見られ続けていると、本来触れられなかった未知の窓でさえ開けられていく錯覚を起こすけれども、そんな風に人は影と共に存在している。
ずくりと深くに潜り込められる唯一のものでありながら、つかず離れず己と他人を兼任する。生涯を終えるまで時に相談相手を与え、またはストッパーを担当している。
それ以上でもそれ以下でもないもう一人はどこまでも己と等しく、要領はいいけれど天恵ではないし、興味の方向が向いているが所詮努力で届く域に居る。そう、そっくりそのままに。
双子のような片割れは、何時でも口の端を持ち上げ目尻を下げている。作り方は同じなのに、笑みには種類があり過ぎる。

人格はそっくりそのままであれば正反対のケースもあると、人それぞれに異なる。だが己の目を逸らしていた部位だといえはしないのだろうか。独立か一部なのか。
まあ、それは理解の及ばない範囲であるし付き合いも長いので、面倒なものには蓋をして横に置くとする。
そうして簡潔に生きるのならば、片割れとの明確な差異である確かな意志に因って動かせる身体があるのなら、愛おしいこの唇を奪うまで。


主にネガティブないらぬ助言をするらしい影を持った帝人くんへ、そんな影ごと愛してあげると言えば長い睫毛が目元に影をそっと落とす。隙間から覗く滑らかな眼は複雑な色彩を帯びて、首を緩く振られた。

影響源を不毛にも否定してくれるのは矛盾を抱えさせてはしまうのだが、簡素に受け取るならとても嬉しいものである。
密やかな謝罪は、片割れだけにしか聴こえないのだけれども。



先程からぐるぐると酔いそうな袋小路にはまっている。臨也さんは十二分に観賞用だと判ってはいる。
一度睡眠に入れば天敵が来ても目覚めない癖を、推測だがこのひとは持っているらしい。きめ細かい白磁の肌に、気が付くと己の指が擦れ擦れに伸びていては引っ込めるのを、延々と繰り返す。
起きないなら、せめてちょこっとは、こんな機会はもう来ないかもしれないから。
そう言い訳を用意しても、慎重なマイナス思考の自分の片割れは見ている。見ているだけ。制止する術を持たないので。
わるいことしてる心地が少しだけ苦しい。



一番近くで葛藤の最中のこを想う。なんだか認識に齟齬があるなあ、と。
せめてなんて、生殺しに等しいのを判ってはいないのだろうか。此処としては、どうか焦らさないで欲しいのだが。片割れと思わず漏れた独り言が重なって、溜息となる。

やはり裏をひっくり返して表をみたら、対になる片恋は二つずつあったのだ。
まあ、なんて幸福な必然と喜ぶには未だ早過ぎるので、余計石橋を叩く羽目になるやもしれないが。
作品名:瞬きを重ねては 作家名:じゃく