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スカートに絡まった虚勢

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人混みに紛れることを好む臨也は、混雑するとわかっている電車に乗り込み、新宿から池袋へと向かう。座席は全て埋まり何人もが立ち並ぶのにあわせて、臨也もミニスカートからすっとのびる白くしなやかな脚を軽く組み、携帯を弄くりながら扉にもたれかかった。
観察対象を探して画面を操作する指の爪は、綺麗に整えられワインレッドに色を変えている。臨也は特定のマニキュアを好んでつけたりはしないのだが、その色似合いますねという少年の声が頭の中で何度か再生され、私用だけでなく仕事の時も、池袋に訪れる際はその色を用いるようになった。
甘楽の名前で何ヶ所かに書き込みをしていると、目的地まで後一駅となっていた。
携帯をしまい、コートに手を突っ込んで窓のほうをぼんやりと見る。窓に写っている臨也は、素材の良さを存分に引き出すナチュラルメイクで少し気にしているつり眼を隠し、美人と言われる顔立ちを可憐に見立てていた。
華美もすぎると、キツい印象ばかりが残る。少年はきっと綺麗よりも可愛らしいほうを好むだろうし、髪だってそうだ。おしとやかさを演出する黒髪のほうが、好印象だろう。
終点池袋で電車が止まると、乗り降りに混雑する人々の中をかいくぐり、臨也は改札口を出ると手鏡でさっと髪型だけを直した。
天敵に出会さないよう警戒しながらも、臨也の足取りは軽い。らしくもなく浮かれていることを自覚して、苦笑する。
確か今日は少年の親しい友人二人は所用で、少年一人で帰宅しているはずだ。それなら誰にも邪魔されずに、少年と話すことが出来る。あまつさえ、立ち話もなんだからとどこか店にでも立ち寄れたら、御の字だ。
そうやって話すだけでさようなら。まるで子どものおままごとだと可笑しくなるが、そんな空気も少年となら嫌ではなかった。
上機嫌でブーツの踵を鳴らし歩く。何時もよりヒールが低いのは、身長差を気にする少年の為だ。ブーツを履くと、ほんの少しだけ臨也のほうが視線が高くなる。それが悔しいらしい。
可愛いことだ。臨也よりは年下であるけれど、それでももう高校生だと言うのに。からかうと、照れて怒ったように赤くなるのが堪らないのだ。
約束はしていないが、少年の帰宅パターンは全て網羅している。目星をつけると、足早に歩みを進めた。
しばらく周囲をうかがいながら歩けば、見慣れた制服がまばらに見えてくる。遠目でも、その中から目当てを見付けるのは難しいことではなかった。
後で怒られるとわかっていて、臨也は大声で名前を呼ぼうとした。しかし、振り上げた手は中途半端な位置で止まり、唇から吐き出すはずの第一声は音を形に出来ずに終わった。
後ろ姿の少年、竜ヶ峰帝人の隣りには、既に可憐な姿があったからだ。
臨也は記憶を探る。確かに今日、園原杏里が帝人ともに下校する予定はなかった。だが、彼女は何時ものように帝人とともにいる。
浮かれすぎて、情報を更新することを忘れていたというのか。この、折原臨也が。
立ち尽くした臨也と二人の距離は、どんどん開いていった。少女の模範的な長さのスカートが、少年の歩みにあわせて翻る。本当なら、そうなるのは臨也のはずだったのに、少女は可憐な顔立ちで清潔感のある黒髪を揺らし、しとやかに少年の隣りにおさまっていた。
数日前のやり取りを思い出す。動きやすいからホットパンツばかりはいているのだと言った臨也に、帝人はスカートだって似合うと思うのにと言った。そこには下心は微塵もなく純粋な好奇心だけが込められていて、それがあまりに新鮮であったから、臨也はわざわざ波江を付き合わせスカートを購入したのだ。
普段と違う服装をすることも、小さな非日常だ。帝人は喜んでくれるだろうか。
そう考え、仕事でもないのに池袋にやって来た。
けれど現実には、制服を来た少女という少年にとっての日常が、帝人の傍らにはある。
臨也はきびすを返し、帝人の後ろ姿に背を向けた。その際、自身のスカートが翻るのが視界に入ったが、着替えて家から出た時のような弾む気持ちはかけらも湧いてこなかった。



作品名:スカートに絡まった虚勢 作家名:六花