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BOMBER☆松永
BOMBER☆松永
novelistID. 13311
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Episode-0

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 これは、009たちが<黒い幽霊団>の元を離れ、ギルモアの旧友であるコズミ博士の家に身を寄せて、しばらくの頃の話である。


 追撃を受けたり、来るべき最終決戦に備えたりと、それなりにいろいろありながら、それでも今サイボーグ戦士たちは、穏やかと呼べる日常を送っていた。
 そんなある日、縁側で一人碁盤と向き合うギルモアの元に、ジェットがやって来た。
「あのさ、博士。今いいかな?」
「ん? どうした?」
 ギルモアは手を止め、顔を上げる。
「俺たちの身体構造について教えて欲しいんだけどさ」
「ほう……」
 ギルモアは驚きに見開いた目でジェットを見た。
「002が、科学に興味があるとはの」
「別に科学に興味があるワケじゃねーよ」
 軽く肩をすくめ、アメリカ人の少年は言う。
「ただ、俺らってオリジナルの容姿を完全にコピーしてるじゃん? でも、機械の体にするんなら、どんな格好させることだって可能な筈なのに、なんで? って思ってさ。
 それに機械の体なのにさ、飯食ったり、そうやって食ったもん出したり、そういうことする訳だろ? そういうのって、本来不要な行為なんじゃねぇの?」
「ふむ……」
 ギルモアは顎を撫でると「まあ、座れ」と促した。ジェットが彼の前に腰を降ろすのを見てから、博士は口を開く。
「そもそも、お前たち00ナンバーサイボーグを作る段階での、我々の課題というものには、戦闘能力の増強と共に、"現在の肉体形状及び身体能力を、如何に損なわず機械化するか"ということがあった。
 人間の脳というのは厄介な代物でな。単純に"器"を入れ換えただけの状態では、正常に認識されん。また、例えば「腹が減った」という欲求信号を脳が発するじゃろ? それを補うには「食べる」という行為が必要になる。体が行為を行わねば、その欲求信号は満たされぬままじゃ。それらの不満が蓄積されれば、いずれ脳は正
常な信号を送ることが出来なくなるんじゃ。
 サイボーグの利点は、ロボットとは違い、自己の判断で行動できるというものにあるから、脳の機能を正常に保つ必要性があった。そのためにも、可能な限り"本来の姿"を保持しなければいけなかったのじゃ。
 じゃから我々は、その時点での科学力の粋を集め、お前たち本来の姿を完全にコピーし、組織細胞から神経系統の一つまでを強化するという形式をとった訳じゃ。
 じゃが、002も記憶にあるじゃろうが、結局改造当初の004は拒絶反応がひどく、かなりの苦痛をもたらす羽目になってしまったな。当時の科学力の限界じゃった。あのままでは遠からず、お前さんや003も同じ状態になっとったろう。
 技術が理論に追い付くまでに40年近くの歳月が必要だった、というわけじゃ。
 お前さんたちの後に改造されたサイボーグは、全てそういう不都合をクリアしておる。まあ、更には、人間の形状すら取らぬ者まで出来るようになったのは、さすがに驚きじゃったな。それだけ科学が進歩した、ということじゃろうて」
「ふぅん……」
 解ったような、解らないような表情で、それでもジェットは博士の言葉に、真剣に耳を傾ける。
「んじゃ、さ。怪我っつーか、故障した時、やっぱ痛いじゃん? それって何のため?」
「ふむ。痛覚は、いわば体の危険信号じゃからな。損傷した時に、痛い、壊れた、という認識がなされなければ、その不完全な状態のまま行動することになる。それは、更なる損傷を促すに過ぎん。そういう状態を回避するために、お前たちには"痛い"と感じる機能が備わっているんじゃ」
「成る程ね」
 ジェットは小さく頷く。
「でも――自然治癒はしないんだよな」
「うむ。お前たちには"自己修復能力"は無いからの。傷がつけば、修理するより他には無い」
「その点が、面倒だよな」
 小さく溜め息を吐くと、ジェットは立ち上がる。
「じゃあさ、博士。ワリぃんだけど、ちょっくら"修理"してくれっかな」
「何処か怪我でもしたのか?」
 幽かに博士は顔色を変えるが、ジェットはしれっとした表情で言葉を続けた。
「怪我っつーか、裂傷? 何処ぞの馬鹿野郎が、ろくに濡れてもねぇ状態で強引に突っ込みやがってよ。まあ、焦らした俺も悪いんだろうけどさ。で――ちょっとばかし、切れてんだよな、今」
 その言葉の意味を解したギルモアは、一瞬ぎょっと目を見開き――それから呆れたように呟く。
「……無茶はするなよ」
「それは俺じゃなく、あいつに言ってくれよ」
 はぁ、と小さな息を吐いて、ギルモアは立ち上がった。
「もう少し伸縮機能を強化させた皮膚組織を用いた方がいいかもしれんな」
 独り言を吐きつつ、ギルモアはドルフィン号に向けて歩き出す。
「……まあ、この機会じゃし、他のメンバーのメンテナンスも行っておくとするか」
 気を取り直して呟けば、
「あ、その方がいいかもな」
 後ろをついて歩きながら、ジェットが軽く答えた。
「この先、何が起きるかわかんねーしさ。どうせなら、他の奴のも"直して"おいた方が、面倒ないかもしんねーぜ?」
 何処か見当違いの発言に、博士は肩を落とした。
「……私はお前たちの育て方を間違ったのかのぅ」
「や。育てられてねーし」
 ギルモアは、再び大きな溜め息を吐いた。



 ジェットの"修理"の後、他メンバーのメンテナンスを行ったギルモアだが、結局彼がジェットの進言通りの"処置"を行ったのか否か――それは記録には残されていない。







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作品名:Episode-0 作家名:BOMBER☆松永