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【ノマカプAPH】深紅の花【中越】

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ずっとずっと昔の話。
普通の“人間”からすると気の遠くなるような昔、私は彼と出会った。
彼の容貌は今でもとても若く見えるが、その頃はさらに幼さが目立っていた。
私に至っては、まるで子供だった。

「お前が越南あるな。我、中国ある。」

それが彼の第一声だった。
彼はその後頼んでもいないのにペラペラと自分の事を自慢げに話し、こちらから何も言わぬまま慌ただしく帰っていった。
それが初対面だった。

その後も幾度か彼は私に話しかけ、私も次第に自分のことを話していった。

ある日、いつものように彼は私の元へ現れ、ペチャクチャと話を始めた。
ふと彼の束ねた長い髪の毛を見ると、そこには深紅の花がさされていた。
一般的に男でそのようなことをする者はいないが、彼の女っぽい顔と綺麗な黒髪に、その花はよく馴染んでいた。
私がその花をじっと見つめていることに気付いた彼は、その花を指さす。

「ああ、これあるか?貰ったある。つけろ言われたから仕方なくつけてるある。」

そう言ったあと、彼ははっと何かに気が付いたようで、おもむろにその花を取り外した。
そして私の左のこめかみの斜め上辺りに触れると、満足げな表情を浮かべた。

「よく似合ってるあるよ!」

そう言う彼の手には先程の花の髪飾りは握られておらず、先刻彼に触れられた場所をそっと触ると、足元に深紅の花がポトリと落ちた。

「…これ………?」

状況が理解できずに、言葉をなんとか絞り出すと、彼はにっこり笑って、

「それは越南にやるある。お前も髪伸ばすよろし!さらさらだからきっと綺麗ある!」

と言った。


それからもう気が遠くなるほどの時間が経過した。
肩にかかるほどしかなかった私の髪は、今ではもう背中の中程まで届くようになっていた。

引き出しの中からそっと取り出して、髪の毛の束へ差し込む。
黒に一点映える紅は、あの日の彼を彷彿させた。

この行為はもう何百回と繰り返している。
しかし、この姿を誰かに見せたことは一度たりともない。
まだ早い、まだ早いと先のばしにしていくうちに、やりづらい状況になってしまったのだ。

いつも通り、その花を髪から引き抜こうとそっと手をかける。
その瞬間、いきなり扉が勢いよく開き、見覚えのある人物が転がり込んできた。

「越南ー!ちょっと我をかくまうよろし!」

そう言うと、引き出しの陰に身を隠した。

「ちょっと…何いきなり入ってきてるのよ…!」
「仕方がなかったある!日本んちのゲームのパチもん作ったら超怒られて説教二時間もされたあるよ?もう耐えられないあるよ!」

彼は自分本意な考えをつらつらと述べる。

「もし私が着替えてたりしてたらどうするの!」
「大丈夫ある。例え全裸を見たとしても、もう変な気を起こしたりすることはないある!」
「どういう意味よ」

私がじりじりと寄ると、彼はゆっくりと後ずさりをする。
部屋の端に背中がついていよいよ逃げ場がなくなった瞬間、彼は私の後頭部の辺りを見つめ、ニヤリと笑った。
彼はいきなり私の腕を引き、耳元で囁いた。



「似合ってるあるよ。」




【終】