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聞きたくも無いわ

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折原臨也は駄菓子が好きだ。
それをしったのはいつごろだっただろう。私がここへ惰性のようにして居つき始めたのはもう随分昔のことのように思われる。はじめて誠二に女ができたあの晩だ。首だけでない生身の女は当たり前のようにして誠二を私の前からするりと掻っ攫ってしまった。私はその瞬間鬼になった。私は誠二以外を愛さない。だから他の何事にも、それこそ雇い主であるこの男についてだって何も興味は無い。しかし男はそんな私すらも愛しているらしい。男は人というものをすべて愛していた。それが口先だけか本心かなんて私にはどうでもいい。どうだっていいのだ、そんなことは。ただ、この男は見た目にそぐわず殊更に厭な男だったので幾ら男が心をこめて愛そうと相手は決してこの男を愛しはしないだろうな、とは思った。かわいそうに、口先だけでつぶやく。そんな男は今、俺はね、駄菓子が好きなんだよ、浪江さん、なんて、聞きたくも無い話をしながらビッグカツの袋を破いている。なんでかしりたい?そう言って男はソファからこちらを見上げにやりと笑った。聞きたくも無いわ、と切って捨てる。そう、聞きたくも無い。そんな子供染みたくせの訳だなんて。どうせこの男は得意の口八丁で意味の無い、しかし意味のあるように聞こえるでたらめを言うのだろう。要するに俺は人が好きなんだよ、に繋げられる適当を。だけどどうせそんなのはお得意のでたらめなのだ。彼のこどもっぽい趣味にそんな高尚な理由なんてない。彼がいつまでもおとなになりきれないこどもだというだけの話だ。それを彼はいつまでも認めきれないでいる。おとなになっていく天敵の姿を見て「置いていかないで」とすなおに言えずにいる。自分はこどもだと、それを認めてしまえればすぐにでも追いついてしまえるようなそんな差に、拗ねてそこを動けずにいる、本当のこどもだ。「聞いてるの、浪江さん」と上目遣いにこちらを見やるばかみたいに整った顔を横目で流し見て、私はちいさく「ばかなひと」とつぶやいた。

作品名:聞きたくも無いわ 作家名:坂下から