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退屈なんです

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三年ほど行方をくらましていた幼馴染を見つけたのは、一年ほど前のこと。
ようやく見つけたと安堵して、心配させるなと喚き散らした。何とも情けない瞬間だったなぁと今では思うけれど、当時はそんなことを思うほどの余裕もなかったのだ。致し方ない。
一も二も無くとにかく連れ帰るべくして手を引こうとするグリーンと、頑として帰らないと言い張るレッドとの言い争いは見事なほど水掛け論で、しばらくの間論争を繰り広げた末に結局レッドの主張を聞くことになった。
そのため、定期的に山へ登って幼馴染の生存を確認することがグリーンの仕事として追加されたわけだけれども、無事が確認出来るのだから何てこともない。

と、思いながら山へ通い続けて一年。

多くて一週間に数度、少なくとも二週間のうちに一度は訪れていたはずの山へ、最近グリーンは足を運んでいない。
何故かと言えば、

「近頃退屈なんだ」

と、当の幼馴染がマサラ(の、グリーンの部屋)に滞在を決め込んだからだった。
近頃も何も、そもそもあんなところに住んでて充実していると言われる方が余程胡散臭い。というよりは、充実のしようもないだろう。
挑戦者がいなければバトルは出来ない。かと言って、誰かを呼びだそうにもポケギアを使うのは精神的に苦痛なんだと言って持たずにいるため、連絡手段がないのだ。(本来の理由はただの機械音痴という一点なのだけれど)
トレーナーとのバトルが無理ならと一時期は野生ポケモン達を相手に修行をしていたようだが、近頃では野生のポケモンたちすら襲ってはこないらしい。レッドの強さがポケモンたちの間で噂にでもなっているのだろうか。
でたらめな話ではあるけれど、レッドなら何でもありかという気がしてくるから恐ろしいことだ。(というか、それで納得してしまえる自分が、多分何より恐ろしいんだろう)



「ねぇグリーン」
「あ?」

俺は明日はジムリーダーの仕事があるんだ、という大義名分を掲げて早々に明かりを落とした部屋。
暗闇に支配されることなく月明かりが十分に室内を照らしていて、難なく床に敷いた布団の上に転がる幼馴染の顔が見えた。

「明日、グリーンと一緒にジムに行ってもいい?」
「挑戦者とは戦わせねーぞ」
「えぇ・・・」
「コトネ呼んでやるから、相手してもらえ」
「・・・・・・分かった」

下りてきた当初はカントー各地を巡っては顔見知りのジムリーダー達に顔を見せたり何だりしていたようだが、一ヶ月で大体のところへは足を運んでしまったのだろう。どうやら、暇を持て余し始めたらしい。
暇だと言われても、実力がチートみたいな人間にあてがえるトレーナーなどそうそう転がっているものでもない。今レッドとそれなりに張り合える人間なんて、ジムリーダー達を除いてしまえばほんの僅かだ。多分、片手で足りるだろう。我が幼馴染ながら、何とも誇らしいことだ。
明後日はヒビキでも呼びつけようかと考えていると、控えめな声が「ねぇ」ともう一度呼んだ。

「ん?」
「グリーンはないの?」
「何が?」
「・・・・・・」

質問の意図が見えずに問いで返すと、押し黙る。
言い辛そうに、眉間に皺を寄せて。何だろう、なんて思わなかった。
その沈黙で、言いたいことが分かってしまったのは、どうしてだろう。

「明日、朝一でいいか?」
「え?」

いつもの無表情が若干崩れて、きょとんと幼い表情が現れる。

「バトル、するんだろ?」

にっと口唇を吊り上げて問うと、一瞬だけ瞠られた瞳がすぐに柔らかく細まる。その表情の変化を見れば、弾き出した回答の正否を問うまでもなかった。



少しの無茶ぐらいなら何でもないと思う。
結局はこの、淡く浮かんだ笑みに甘いのだ。
作品名:退屈なんです 作家名:つみき