信心深い人
さようなら、罪深き子供。
それだけ、男はたったそれだけを云って、それからゆっくりと白い手袋をはめた。
よく知っている手。
その手はいつだったか俺の首を絞めたし、俺の頬を撫ぜた。
その手は俺のぬくもりを知っていた。
なのにアイツはその手で俺を殺そうというのだ!
流石は軍の狗だ、そう鼻で笑った。浅ましい狗どもは、仲間殺しをやってのけるのだ。ゆっくりと、灼熱の焔が身を包むのを感じた。
男は云った。
「知っているか、鋼の。何処か異国の地では、神に背きし者を火あぶりにしたんだそうだ。」
何処の国でも錬金術師の死には火刑が相応しいようだね、男は微笑んでいた。
俺はその漆黒の瞳に焔が映って真っ赤なのを見た。