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星月かける
星月かける
novelistID. 15579
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1-1 . わらったララバイ

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シングルベッドに白いシーツ。
部屋に窓はなく、置かれている物も両手があれば数えられる程少ない。
一番場所をとっているのは今現在自分が寝かされているベッド、次にテーブル……その上には紙が散らばっていた。
此処が地下だということは双識にも明らかだった。
分からないのは、何故自分が此処にいるか、ということだ。
立ち上がると頭が重く視界が白く瞬いた。
ふらふらと覚束無い足取りでテーブルまでたどり着き散乱している紙を手に取る。
それは五線譜だった。音楽についての知識が皆無に近い双識にもそれが楽譜だということは一目瞭然で。
(トキの部屋だな)
実を言えばそんな事は確認するまでもなかったけれど。
気を失う直前まで一緒にいたのは零崎曲識その人だったのだから。
問題も疑問も何も解決した訳ではない。
双識が溜め息を洩らしたところでタイミングよく扉が開いた。

「レン、休んでいた方がいい」
入ってきたのはやはり曲識だ。
膝下にまで伸ばされた緩くうねる髪に見慣れた燕尾服。普段と同じ零崎曲識だった。
一歩も動かない、あるいは動けない双識を不思議そうに見つめて、「休んだ方がいい」と淡々と繰り返す。
彼はこの状況に何も思わないのだろうか。
「トキ、どうしたんだい?」
説明を要求しても相手はきょとんと首を傾げるだけだった。
逆に聞き返されてしまう。
「なにがだ? どうかしたのか? レン」
しかも問いかけておきながら答えは聞いていないらしい。
腕を掴まれるとそのままベッドに戻るように誘導された。
されるがままにベッドに再び沈み込む。頭が未だにぼぅっと霧がかっているようだった。
見上げるかたちとなった愛しの家族は相変わらずの無表情で双識をじっと見つめている。
「トキ……」
「レンは働きすぎだから、少し休んだ方が良いと思う」
「うん? そうかな?」
「ああ」
普段通りの無表情だが普段以上に真剣な口調だった。
言い繕いなど一切出来ないような強い声音。不思議な力が働いている、そんな錯覚。
曲識が言うのなら、きっとそうなのだろう。
「レン」
ふ、と視界が暗くなる。シーツが僅かに沈む。黒いカーテンは曲識の髪。
「休んだ方がいい」
「ああ……、そうだね」
「もう一回眠った方がいいと思う」
「もう眠くないんだよ」
「いや、……それは、ない」
曲識の声が穏やかに双識を包み込んだ。
とろとろと瞼が降りていく様を見ながら、シーツに散らばった黒髪を手で梳いてみる。
「『眠る』」
声が空気にとけていった。
眠りにおちた双識を見つめる曲識の表情に変化は見られない。
しかし双識が見ていたならばこう答えただろう。
「安心しているみたいだね」と。