Call You
「ケイ!」
彼は二、三歩遅れて立ち止まると肩越しにこちらを振り返った。綺麗な黒い瞳がこちらを見つめる。シャーマンは啓介を呼ぶだけ呼んで、その先の言葉を紡がなかった。何を言おうかだなんて考えていなかったのだ。ただシャーマンは立ち止まって、振り返った啓介を見つめていた。
「なんなの~?」
「なんでもない!」
「はぁ?」
「呼んだだけ!」
そう言って、白い歯を見せて無邪気に笑う。
啓介は至極面倒くさそうに眉根を寄せたが、嘆息を一つつくと歩みをシャーマンへと戻して彼の左手はシャーマンの右手を取った。
「歩くの遅い。ちゃんとついてきてよネ」
太くて大きいごつごつとした手のひらを握る、細くて白い骨ばった小さい手のひら。握り返したら手折れてしまうのではないかと思うほど、華奢な啓介の手のひらからは確かにじわじわと温もりが伝わってくる。
これが人の体温、人の暖かさなのだ。
「ケイの手、あったかい」
笑顔で率直にそう告げると、啓介はまんざらでもないような曖昧な表情を浮かべると、すぐにシャーマンから視線を逸らして前を向いてしまった。
「ケイ、ケイ!」
「はいはい」
「大好きだよ、ケイ!」
だから彼の名前を呼ぶのだ。
【Call You】