移住希望の金星人
「あーあったかい国に移住したいな」
云ってぶるりと千石が頭を振った。水を頭からかぶっていたせいで、雫が当たり一面に散らばる。アスファルトの上に落ちた雫を見つめた。
「なんでいきなり・・・、」
「なんとなく」
そう返されるともうどうしようもない。俺は黙ったままタオルで頭をガシガシ拭いていた。ホント、千石って時々電波だ。こういう奴がいるから俺みたいなのが苦労するんだよ。どうでもいいことを考えながら思考がどんどんネガティヴになっていくのを感じた。
「あ、」
「どした?」
タオルの隙間から、千石のほうを覗き見る。
「あったかいとこって、ゴキブリでかいんだよね」
「あーそう聞くな」
「じゃあやっぱいいや」
ずっとその事考えてたのかよ、おもわずつっこみたくなったが労力の無駄なのでやめた。ホント、千石の思考は分からない。もう金星人だよ、アイツ。