二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

飴は噛むモンじゃないよ

INDEX|1ページ/1ページ|

 

「そんなに強う噛み締めたら血ィ出るよ」
ほっそりとした仁王の指が丸井の唇をつついた。そこで丸井はようやく自分が唇を噛み締めていた事に気が付く。結んでいた唇を解いた瞬間鉄の味がしてこれは切れたなと予感した。唇の周りをぺろりと舌で舐めるとますます強く鉄の味がする。
ふと視線をあげると仁王とかち合って、無表情だった仁王がホラ云わんこっちゃない、と云った風に笑った。
「切れたん?」
「ちょっと」
何もかも見透かされているようで、決まりが悪くなって顔を背けた。ポケットをまさぐる。生憎先ほど道端に吐き捨てたガムが最後の一枚だったようで、ポケットに突っ込まれた両手はそのまま抗議したように外気に触れる事無く奥深くに沈んでいった。前を歩く仁王の後ろ髪がひょろひょろと動物の尻尾のように動く。風が少し強いせいで本当に生き物の尻尾みたいで笑えた。なにやらポケットをまさぐっていた仁王は突然ふりむいて、丸井の前に手を突き出す。硬く握り締められた手から赤いセロファンが覗いていた。
「なに?」
「あめちゃん。ブンちゃんにあげるよ」
丸井は仁王の手の下に両手を広げた。万が一取りこぼさないように。
「なんでいきなり、うれしいけど」
「ブンちゃんの機嫌がなおるように」
先ほどまで前を歩いていた仁王は、丸井の歩調に合わせてゆっくりと歩き出す。こういうときに体格差てかんじるなあ、セロファンを向きながら丸井は思う。
「飴で俺の機嫌とろーってか」
おどけた感じに、なるだけ冗談っぽく丸井は云い、頭の後ろで腕を組んだ。かちかちと、歯にあたって音を鳴らす飴はいちごの嘘っぽい味を口中にまきちらす。
「まあこんくらいでなおらんやろけど」
気休め気休め、独り言のように呟き仁王は丸井の顔を覗き込んだ。
「血ィ、付いたまんま」
「あーもうめんどくさい」
投げやりに答えた瞬間かちりと、歯と飴がけんかした。この音はどうもなれない。感触も。妙に硬くっていけない、丸井はがりがりと奥歯で飴を噛み砕いた。
「飴は噛むもんやないよ」
「知ってる、てかお前今日えらい喋るな」
「うん、機嫌悪いけんね」
機嫌が悪いときに饒舌になる奴はじめてみた、目を丸くして丸井が云うと仁王は珍しいかもねと返した。
「機嫌悪いけんどっか遠出したいな。ブンちゃんついてきて」

コンビニに行く感覚で云うものだから丸井も思わず頷いてしまった。いくら試合で疲れてたとは云え、もう少し考えるべきだった、丸井は今でもこのときの自分の軽率な行動を悔やんでいる。