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パイプ椅子と屋上

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「ニオくんニオくんどこいくの?」
童話の始まりのように問う。自分のキャラを充分分かっているから、出来るだけ可愛く。そうしたらよくわきまえてる仁王もブン太くんはかわええね、と云って笑った。何この芝居。反吐が出そう。丸井はペッと唾を吐いて前を向いた。ポケットに突っ込んだ手は、ひんやりとしてきた。秋の始まりは案外寒かったりする。
仁王は切符を二枚買って、一枚丸井に渡した。おごってくれんの?と聞いたら、こっちから誘ったからねえと返してきた。こういうところが仁王がモテる要因なのかな、思って自分のつま先を眺めた。
「落ち着きがなかね」
「寒くってさ」
電車に乗ると人の温もりがした。そのまま無言で二駅行くと、仁王が次降りるよ、と声を掛ける。ぼんやりとしていた丸井はそこでようやく窓の外を見た。ネオンがきらきらと光っている。
「仁王の地元?」
「まさか、そうやったら切符買わんよ」
それもそうか、思ってきちんと座りなおした。前に座るおっさんのそろそろやばそうな頭の奥に光るネオンはやっぱり綺麗だった。



「ここどこー?」
カツンカツンと音を立てて、錆びかけている階段を上る。前を行く仁王はちらりと丸井のほうを振り向いて云った。
「俺の隠れ家」
四階分くらい螺旋階段を上ると屋上についた。ただっぴろい屋上にぽつりとパイプ椅子が置いてあった。
「あのパイプ椅子なに?」
「俺が持ってきたんじゃ」
仁王って普段何してるんだろう、丸井は思った。二人はパイプ椅子の近くまでいくと腰を下ろした。あーやっぱり秋の夜は冷える、思いながら丸井はポケットの中の手を強く握り締めた。空を見上げたらほんのちょっとだけ星が見えて、でもそれは明らかにネオンに見劣りしてた。
「いつもこんな所に来てんの?」
「あーたまに」
「仁王くん何で今日機嫌悪いの?」
「なんでじゃろ」
話が続かねえよボケ、思いながら丸井は寝転がった。やることが無くて、唇の周りを無意識にぺろりと舐めた。さっき切れた所から鉄の味がして、そういえば切ったんだ、思い出して一気に気分が沈んだ。



作品名:パイプ椅子と屋上 作家名:おねずみ