ツイッタの診断からやってみたイザミカ習作
池袋の街を臨也が走り、その後を静雄が追いかける。
いつもと違うのは、帝人が見かけた時点で臨也の息が上がっていたことだ。
「臨也さん!」
突然声をかけられた。
が、走り続けるしかない臨也にその声に反応する余裕はない。
それを知ってか知らずか、声の主は臨也の腕を掴み、引き寄せた。
「…っなに?」
「ここ。ここなら、少し休めるんじゃないかと思って」
声の主はにこりと微笑む。
その笑顔は、天使のようであり小悪魔のようでもあった。
「もう少し…っ、やり方がある、だろ、帝人君」
「でも臨也さん、聞く耳持ってくれなさそうだったんで」
そういって、帝人は臨也を引きずるように路地裏へと進んでいく。
どこに行くかは分からない。
ただ、静雄の目が届かないところへ行っているのは、なんとなく理解出来た。
「ねえ帝人君」
「なんですか?」
「どこに向かってるの?」
気がつけば、臨也の息は規則正しくなっていた。
呼吸を落ちつけられるくらいの距離を、気付けば歩いていた。
「僕の家です。どこかに隠れないと、また追いかけっこ始まっちゃうでしょ」
「まあ…そうだね」
「だから、ちょっと隠れててください」
「じゃあお言葉に甘えようかな」
「そうしてください。自販機が飛ぶ街を歩くの、楽しいけど危ないですから」
笑いながら、帝人は臨也の手を引き、足を進める。
だが、数歩進んだところで足が止まった。
臨也が足を止めたため、帝人は止まらざるを得なくなった。
「けどさ、帝人君。一つ言っていい?」
「なんですか? …っ」
臨也の言葉に返事をした次の瞬間、帝人はアスファルトの塀に背を預ける格好となった。
正確には、背を押しつけられた格好だ。
目の前には臨也の顔。
それも、鼻と鼻がひっつきかねない距離にあった。
「俺さ、言わなかったっけ?」
「…何を、ですか?」
「帝人君のこと、好きだって」
「…」
臨也の言葉に、帝人は頬を薄く染める。
「そんなこと言ってる相手を、安易に家に上げていいわけ?」
「…それは…」
「それとも、その気になってくれたってこと?」
「っ、違います!」
言いながら、帝人は臨也をぐいぐいと押しのける。
その行動を制そうと、臨也は塀に手をつき、帝人を挟むような姿勢をとった。
「照れ隠し?」
「ちーがーいーまーす!」
「そう、残念」
「もういいです!勝手に静雄さんに見つかって、自販機とか投げつけられててください!」
「酷いなぁ」
クスクスと笑いながら、臨也は帝人を解放する。
思いきり押しのけようとしていたのか、帝人は一瞬だけ体のバランスを崩した。
それを受け止められ、帝人は上目づかいで臨也を睨みつける。
「怖いなぁ」
「怖いのは臨也さんですよ!」
「そう?」
「そうです!それじゃあ失礼します!」
言いながら、帝人は小走りに臨也の元を去って行った。
「ほんと、面白い子だなぁ」
帝人の背を見送りながら、臨也は呟く。
彼は臨也の周りにいなかったタイプの人種だ。
だから面白い。
「今度はキスでもしてみようかな」
そんな、帝人が聞いたら怒りだしそうなことを呟きながら、臨也は新宿へと足を向けた。
作品名:ツイッタの診断からやってみたイザミカ習作 作家名:香魚