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インテリ博徒と情報屋の 第一次接近遭遇

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数日後の早朝、池袋の街並み。
 人がほとんど居ない中を臨也は全速力で走っていた。その後ろには怒号を叫びながら数人の男達が追い掛けてきている。
 臨也には憶えがなかった。なぜ追われる羽目になったのか。思い当たることといえばただ一つ、最近自分に仕事を依頼してきた男。ただ、あの男は違った。
 今、自分を追ってきている人間達は、確実に『あちら側』の人間だ。
 耳に遠ざかって行く怒鳴り声との距離を振り向きながら確認して、勢い良く角を曲がる。
「、っとぉ」
 身体が誰かに受け止められたが、それを振り切ろうとした。しかし身体全体が受け止められていることを認識していない臨也は思い切り腕を振り抜き、強制的に身体を引き剥がそうとしたにも係わらず、それすらも敵わなかったのだ。
「ッ、なせっ」
「手前からぶつかっといて、そりゃあねぇんじゃねぇか? 少年」
 その声と同時に、追い掛けてきた声が徐々に近付いてくる。臨也は顔を上げると同時に舌打ちをしたが、受け止めていた人物は至極落ち着いた声で臨也に問うた。
「……なんだ、追われてんのか」
「煩い、離せっ」
 聞こえてくる声の方向と行きたい先を交互に慌てて見回す。進みたいと焦る心は現実には受け止められてて動けない。耳にはっきりと聞こえてきた怒鳴り声に臨也はぎゅっと目を閉じて覚悟を決めたときだった。
 頭からバサリと何かを被されて、肩から抱き締められた。そして無理やり顎を掴んで上を向かされると同時。
「大人しくしてろ」
 そう呟きが聞こえた刹那に、乾いた唇が自分の唇に重なるのを感じた。
 あまりにも急な出来事に目を見開いて声を失った時、足音が自分のすぐ後ろで止まったのが聞こえた。しかし、次に聞こえてきた声は今までの怒号とは違うものだった。
「あ、四木さん。ちわっす」
 次々聞こえてくる挨拶に、その男は臨也から唇を離すと、まるで顔を隠すように臨也を胸へと近づけさせる。無理やり当てられた胸の鼓動は、落ち着いた音を耳に響かせ、逆に自分の心臓がものすごい脈を打っていることを知らせてくる。
 今、自分を抱き寄せている男の正体がわからない。わかることは、自分を追い掛けていた人間達が全員そこで足を止めている。それだけだ。
「何を朝っぱらから騒いでやがる」
「いや、あのですね……こっちにこういう小僧が……」
 臨也に状況は見えないが、会話から予想は着く。きっとこの男に写真でも見せているのだろう。その状況が臨也の心臓の鼓動を更に早く大きいものにしていく。
 この男が、自分を覆い隠しているこの布を、いつ剥がすかなど知れたことではないからだ。
 しかし、耳を通して聞こえてきた声は臨也の意に反したものだった。
「こっちには来てないぞ? それよりか早く散ってくれねぇか? やっと『イイ人』を口説き落とせたんだ。あまり怯えさせたくないんでね」
 困ったように笑うと、周りの人間はその胸に抱かれている人間が臨也とは気が付かず、震えている様子だけに目が行き、全員が謝るとその場を去ろうとした。その時だった。
「四木さん!」
「おぅ?」
「さっきの写真の小僧、あの件の当事者っすから!」
 それだけを叫ぶと、足音は遠ざかって行く。
 暫くすると、臨也の視界が突然明るくなった。その光の強さに臨也が目を細めると、今まで自分を隠していてくれた男の手が頭の上に乗せられ、質問が降ってきた。
「少年。……もしかして『オリハライザヤ』って名前ですかね」
 突然の質問ではあったが、臨也はその男にゆっくりと一度だけ首を縦に振ってから気が付いた。

──この男、仲間っ!

 しまった、と思うより先にその腕はきっちりと捕まってしまっている。男は臨也の顔を見ると、ニコリともせずにその手を引いて歩き出す。
 男の歩く距離は、さしてなかった。臨也が来た道を数メートルだけ戻る形で歩くと、止めてあった車にキーを挿して助手席側に臨也を押し込み、自分は運転席へと収まる。そしてエンジンを掛けるが、すぐに走り出すことはせず、そのまま男は煙草を上着から探し出すとそれに火をつけて息を吐き出した。
「とりあえず、もう一度聞く。少年は『オリハライザヤ』か?」
「……」
 臨也は答えずにいると、その男は煙草を深く吸い込んでから少しだけ窓を開けて煙を吐き出した。
「まぁ沈黙は肯定、だな。俺は四木」
「……俺をこれからどうするつもりですか」
「とりあえず……少年が探し人だったので、大人しく来てもらえますか」
「逃げようとしたら?」
「そうだなぁ……色々と保障出来ないですねぇ」
「俺に与えられている選択権はなし、ってことですか。……わかりましたよ」
 臨也は諦めて大きく溜息を吐くと座席に体重を預ける。それを視界に入れた四木は煙草を消しギアを入れるとゆっくりアクセルを踏んだ。