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ラストゲーム 4

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「死神の手って冷たい」

真夜中、突然襲ってきた痛みに耐えていたとき、ふわりと気配がして、臨也の髪を労わるように撫ぜた。
同情なら触れるな、と叫びそうになったが、冷たい手があまりに優しくて、臨也はこぼれた涙に気づかれないよう枕に顔を強く押し付けた。

「死神とて一度死んだ身には変わりが無いのだろう。お前は少し熱があるな」

探るように首筋に冷たい手のひらが触れて、臨也は自分の体が痛みのあまりこわばっていたことに気づいた。
ゆっくりと息を吐き、強張りを解いた。その間も、津軽は肩や肩甲骨や背中を撫でる。
薄いパジャマ越しにもその冷たさは心地よかった。

臨也は津軽から死を告げられた日から、部屋のものを片付けたり、人間関係の整理をし始めた。
人間関係は煩わしいこともあったが、物を片付けるのは容易かった。
もう、どれも欲しいとは思わなかったし、残したいとも思わなかった。
パソコンのデータ整理までするのに、死神が告げた時間は十分なほどだった。
容易く捨てれるものたちに囲まれていたことに、臨也は虚しさを感じずに入られなかった。

それでも、死の宣告をされてから。
臨也が仕掛けた罠に静雄がのめりこみ、いつも以上に臨也に執着を見せることが楽しくてしかたがない。
門田や新羅さえも巻き込み、臨也は静雄の眸に映っているのが自分だけであることに優越感を抱く。

「津軽はどうして死神になったの」

「さあ? 死神になる前の記憶は消されるからな。ただ、気づけば死神としてのナンバーが与えられ、魂を回収するようになった。その繰り返しだ、お前で何人目の回収対象なのかもおぼ
えていないほど長い時間が過ぎた。何故俺に興味を持つ?平和島静雄といったか、お前が執着している男。あれに似ているからか」

臨也は枕から顔を離し、津軽をまっすぐ見つめる。その紅眸は静雄を見るのと違う、穏やかなものだった。

「津軽とシズちゃんは似てないよ。津軽はこうやって俺に優しく出来るけど、シズちゃんは誰に対してもどうやったら優しく出来るのかわからないんだ。それに俺は嫌われてるから、優し
くなんてされないしね」

「俺を優しいといったのはお前で二人目だな。一人はお前に姿だけは似た死神だ。俺はお前の魂を回収するのに、それでも優しいか?」

「優しいよ。少なくとも俺よりずっと優しい――だって俺はこれから、酷いことをするんだから」

誰に、と津軽は聞かなかった。

罠は十分に仕掛けた。
後は静雄が自分のもとへ堕ちてくるよう、最後の仕上げをするだけ。
そしてその時が、臨也は静雄と永遠に別れるときなのだと分かっていた。
唯一容易く捨てられないもの、どうでもよくないもの――それが愛や恋と呼ばれるものだと分かったところで、臨也にはそれを静雄に気づかせる気はなかった。
ただ自分を忘れないでいてくれたなら。
憎しみでも構わない。甘い感情など入る隙が無いほどにあの強い眸に自分が焼きつけばいい、そう思った。

「――お前達は不器用だ」

再び訪れた眠りに落ちる寸前の津軽の呟きを、臨也は夢現に聞いた。
作品名:ラストゲーム 4 作家名:氷迫律