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伝わるように

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この苦しみを、分けてあげたい。
きっかけは溢れ出るように積もったそんな思いだ。
苦い。息が、詰まりそう。
目の前の笑顔をだから傷つけてやりたかった。
私の、苦しみが、どうか正しく伝わりますように。

……まぁそんな願いは叶うわけがないんだと、返ってきたメールで思い知りましたけど。

私が可愛いのは私のせいじゃない。でも顔だけ褒められたって嬉かねぇよって、思うことすら私には許されていない。だって、何もないもん。他に何も持ってなんかないもの。
そのくせ、親に愛されなかったのは私のせいなのだ。少なくとも、親はそう思っているだろう。「この子じゃなければ良かった」と、親に思われる気持ちをあの人はきっと分からない。親に愛されて育った子供、というのは私には未知の世界だ。そういう絶対的なものを、もらえなかった子供は一生そのままなのだろうか。きっとあの人にはわからない。
胸が痛いくらい羨ましいって、あなた知らないでしょう?
知りたくなかった。私だって知りたくなんてなかった。
あなた、知らないでしょう?

偶然会ったって、話すことなんて何にもなかった。ヒデくんとの間はなんにも変わってない。この人は、言わなかったのだ。私が棘だらけの言葉を吐き出したことを。そのくせ何にも、分かってないままだ。潔い、形のよいボブに包まれた、相変わらず子供みたいな顔でそのことが知れた。
あぁ、バカみたいね。
私は下を向いてから小さく笑うと、そのままの姿勢で横を通り過ぎる。そのまま、もうきっと二度と会わないはずだった。
手をつかまれるなんて思わなかった。
「あ、と……」
向こうにも予想外の行動だったらしく、戸惑ったように自分の手を見ている。振り払って、やる前に離された。落ちた私の手が、まるで淋しいって言ってるみたいでちょっと、笑える。するとピクリと目の前が揺れた。のろのろと顔を上げると、やっぱり思ったとおりの目があった。
私のこと、怖いのね。
今度こそ笑った。目の前の戸惑いがますます大きくなったって、知るものか。ヒデくんとは別れよう。もういいや。もういいんだ。私はどこかすがすがしいような気持ちで顔を上げて、完璧な笑顔で言ってやる。
「忘れてください」
お願いします、と頭を下げて立ち去ると、今度こそ追っては来なかった。もういいんだ。もういいんだ。
「ふっ」
私は笑っている。頬を伝うのは汗だ。口を抑える掌を濡らしているのも、ただの汗だ。背筋を伸ばしながら、必死で息を整えた。背中でせめて、言ってやれたらいいと思う。
さよなら。もう二度と会わない。
怖がらせてごめんなさい。
あなたは知らなくていい。あなたは知らないままでいて。
愛されたいしか知らない、醜い私をどうか、忘れて。
作品名:伝わるように 作家名:フミ